私の名前は猿飛美月。
あの猿飛佐助の実の妹であり幸村様のお目付兼補佐役の兄のお手伝いをしていた人間だ。
そして、兄の猿飛佐助がとある男に殺されそうになったところを庇って死んだ馬鹿でもある。
あの私が胸を貫かれて血を吐いて倒れた時に見た佐助の顔と来たら。
私は真っ暗な空間の中で静かに目を閉じてあの時の兄の悲痛な表情と叫びを思い出すと再びその目を開く。
すると、突然先程まで真っ暗だった場所が白く輝き出し私の視界を覆ってきた。
私は思わずその眩しさに目を細めると、突然目の前に現れた二人の男の影に笑顔を浮かべながらも警戒をする。
「……あはー、アンタ達は一体何かな?」
途端にのほほんと笑顔を浮かべていた顔立ちの整った男が私へ向けてこう言った。
「そう慌てるでない。……して、お主は猿飛佐助の妹か?」
私はその言葉にゆっくりと先程まで浮かべていた笑顔を無表情に変えて目を細める。
「……何、アンタら敵国の人間?」
しかし、次の瞬間にこの場の空気をぶち壊したのは私の問にゆっくりと首を左右に振った男の隣にいた、恐らく幸村様ぐらいの年齢であろう青年。
彼はあわあわとした様子で私を見つめ興奮した様子でこういう。
「え、え!?猿飛佐助ってあの猿飛佐助!?」
私はそれに対して片目を顰めると、その青年を困ったような表情で宥める男に目を向ける。
男は取り敢えず一時的に黙った青年にほっと息を吐くとこちらへ向き直る。
「うむ、お主からの問い掛けへの答えだが否だ。俺達はお主の敵ではない」
「ふーん、ならなんで私はここにいるのかな?」
男は考える様に顎に手を添えると「ふむ」といい黙り込む。
そして、めぼしい答えが見つかったのかこう続けた。
「分からんな」
堂々とした面持ちで平然とそういう男とその隣で未だにうずうずとしている青年。
私はひとまず溜息を吐くとその場に煙幕を炊くとその部屋から飛び出した。
(メモ)
大典太光世→宮本武蔵
膝丸→柴田勝家
小烏丸→真田幸村