アレンくんがティキを大きな剣で斬った時に私は体制を崩しその場に蹲ったティキへと駆け寄ろうとした。
しかし、それを止めたのはティキ本人。
ティキは私へ対して右手を突き出し口を開く。
「……いい、来るな」
でも、その大丈夫の言葉は少し尖っていて私は思わずその場から数歩後ろへと後ずさり胸の前で両手を組む。
刹那、アレンくんに剣を突き立てられその場から後ろ向きに倒れたティキ。
私はその場で大きく目を見開きながら両手で口元を覆う。
そして、そんな私の視界の端では喜ぶ男の人が一人。
しかしその人も突然背後に現れた蝋燭によって背中を突き刺され倒れた。
「動くな。動いたら、全員刺す」
その直後、その場に響いた声は確かにロードちゃんのものなのに、いつもの明るくて陽気な声からは想像出来ないほどの怒りと憎しみを感じた。
私はその場にいる人達が蝋燭に囲まれているのを見渡すとゆっくりと床に倒れているティキへと近付き、そのまま彼の頭を自身の膝へ乗せて彼の名を呼んだ。
「……ティキ」
そっと触れた頬はいつものように暖かい。
けれど、いつものように私が頬に手を当てた瞬間に見える綺麗な琥珀色の瞳と微笑みが見えない。
それが哀しくて寂しくて私は無意識に涙を流した。
すると、先程まで口を閉ざしていたロードちゃんが無表情ながらにこの場にいるアレンくん達へと向けて言葉を放った。
「神ノ道化のアレンはこんなんじゃ死なないだろーけど、アレン以外はたぶん死んじゃうよぉ?」
ふふっと笑いながら私達の側へ歩いてくると、ティキの頭を撫でながら私の涙を指で拭うロードちゃん。
ロードちゃんは私を安心させるかのように微笑んで続けた。
「僕ね、アレンのことスキだけどぉ、家族も特別なんだぁ……。この気持ちはアレンと一緒だね」
ちらりとアレンくんに目を向ければ静かに息を呑む彼。
ロードちゃんは見た事の無いほど冷たい瞳をアレンくんに向けながら私の頭を抱き締めた。
「動かないで。僕ちょっとムカついてるんだよ。仲間の体に穴が開くの見たい?でもそれだけじゃ足らない。一人……アレンの仲間にお仕置きしちゃうんだから」
直後に少しだけ嬉しそうな声色になった彼女。
「赤毛の子、ラビっていうんだね?あの子の精神は今、僕の内にあるんだよ。……そいつの心メチャクチャにしてやる!!!」
私は動き出したラビくんから目を逸らすようにティキを抱き締めた。