これは今でも私の記憶の中で色濃く残る異世界での話。
辛くてひもじくて苦しくて悲しくて。
でも、あの子達という存在がいたからそんな気持ちも忘れて幸せでいれた。
確かに、最初はあの子達も私を信用してないし寧ろ殺しに掛かってきていたけれど時が経てば私を母と慕ってくれた。
あの子達の私を呼ぶ「母さん」という言葉が好きだった。
あの子達が私に向けてくれる真っ白な笑顔が好きだった。
私は静かに目を閉じてあの頃を思い出す。
私が漫画の世界に突然トリップして、その漫画の主要キャラたちの母になった頃の思い出。
「……幻影旅団、か」
パラパラと漫画を捲れば確かにあの子達の面影を残した何人かの大人の姿があり、無意識に私は頬を緩めて紙越しに愛しい息子や娘を撫でる。
「会いたいものだね」
きっと君達は君達を置いて先に逝った私を少なからず憎んでいるのだろうけれど。