いつだって、彼は弱いけれど強い人だった。
それは、10年前のあの時から知っている。
「どうした、ギル坊。もうへばったか?」
息を吐いては吸ってを繰り返しながら地面に膝を付くのはいずれ私の大切な人になるギルサンダー。
彼は目の前で腕を組むメリオダスさんに向けて弱音を吐き出し始めた。
「僕には...無理です!どうせ...父さんやメリオダスさんの...ように強くは...なれないんだ...!」
ぜぇぜぇ言いながらそういう彼に、メリオダスさんは何ともないような顔でギルへひとつ告げた。
「お前な、まずはそのネガティブな思考をどーにかしろ!」
それと同時に、私はズカズカと未だに地面に膝を付く彼へ近付くと口を開いた。
「その眼は悪を見抜き、その口は真を語り、その心は正義に満ち、その剣は悪を砕く。自分が正しいと思うことを貫くことが騎士にとって大切なことなんでしょ?」
彼は私の言葉を聞きながら静かに立ち上がると私の名を呼んだ。
「マーガレット......」
私はそんな彼に笑を向けながら続けた。
「メリオダスさんも、父さんも関係ない。貴方は貴方なの。ギルはいつかきっと誰より藻強くて優しい聖騎士になれる。私はそう信じてる」
「...うん!」
目の前で私の顔を見ながら元気良く頷く彼。
そんな私達を見ていたメリオダスさんが一人納得するように確信めいた様子で告げた。
「こりゃ、尻にしかれるな」
同時に紅く染まったのはギルの顔で、私はメリオダスさんを見ながらクスクスと笑う。
「もう、メリオダスさんったら」
「本当のことだろ?」
「まあ、そうですけど」
ギルがニコニコと笑い合うわたし達を見て嫉妬したのか、急に私に抱きついてくると同時に肩に顔を埋めてきた。