『…また降ってきた』





ここ最近は天気が不安定。
雨が降ったり止んだり、時々雷もなったりする。
もう天気予報なんてあてに出来ない。

昨日なんて朝はとっても晴れていたのに、放課後になったら物凄い土砂降り。
仕方ないからずぶ濡れで帰宅した。


でも今日はちゃんと折りたたみ傘持ってきたんだから!


お気に入りの水玉の折りたたみ傘を広げ、いざ帰宅!と思ったとき。
昇降口に見覚えのある学ラン姿が見えた。

帰るのかなって思ったけど、恭ちゃんはただ雨の降る外を睨みつけているだけだった。



…もしかして傘無いのかな



何だか笑える。
あの最強委員長が雨に足止めくらってるなんて。
あんなに不機嫌な顔して外眺めてるしか出来ないなんて。



『恭ちゃん恭ちゃん』

「…名前」



声を掛ければ不機嫌な顔のまま振り返った恭ちゃん。



「何の用?」

『彼女に向かってそりゃなくないですか』

「そんなの知らないよ。」

『そんなこと言う人は傘に入れてあげないから!』

「……」



あら。黙っちゃったよ。



『今日もお天気お姉さんはハズしちゃったねー』

「……」

『あー良かった傘持ってて!流石あたし!!』



恭ちゃんすごい悔しそうな顔してるなー
ポーカーフェイスのつもりだろうけど、あたしには分かっちゃうんだからね。



『恭ちゃん』

「……何」

『仕方ないからしっかり者の名前ちゃんが傘に入れてあげます』

「…別に頼んでない」

『またそんな意地張って。厚意は素直に受け取りなよ。ほら、』


何だかんだ言いながらも、傘を傾けてあげれば恭ちゃんは遠慮がちに傘に入ってきた。
ほんと、素直じゃないなぁ



小さめの折りたたみ傘に二人で寄り添って入る。
恭ちゃんの肩が濡れないように、ちょっと恭ちゃん側に傘を傾ける。
気付かれない程度に、ちょっとだけ。
恭ちゃんって実は風邪ひきやすいから。



今日はお弁当にハンバーグが入ってた、とか、友達から小学生みたいって言われた、とか。そんなくだらない話をしながら五分ほど歩いたときだった。
突然、恭ちゃんに傘をとられた。
いや、あたしにもさしてはくれてるけど。今まであたしが持っていた傘は何の前振りもなく恭ちゃんの手に持ち替えられた。

『どしたの?もしかして肩濡れた!?』

恭ちゃんの方に傾けてたつもりだったけど、やっぱり濡れちゃったのかも。

「違うよ。ただ、君が持つと低いから」

『…あ、』


そっか。あたしと恭ちゃんは結構身長差があるから、あたしが普通に持ったら恭ちゃんは屈まなくちゃいけないんだ。そりゃ歩きづらいわ。


『ごめん気付かなくて…!』


そんな状態で歩いてたのか恭ちゃんは…!申し分けなさすぎる…!!


「別に。僕が持てばいいだけだしね」


前を向いたままそう言う恭ちゃんはいつも通りの無表情だったけど、持ってる傘はさり気なくあたしの方に傾いていた。




『恭ちゃんありがと』

「……」

『照れ屋だなぁ』

「うるさいよ」



ほんと、不器用な人。
あたしが気付いてなかったら、雨が止むまであそこにいなきゃいけなかったんじゃないだろうか。


あなたの不器用な優しさに気付けるのはあたしだけ。
だから、ちゃんと、捕まえててよ?






雨傘
(傘持ってて良かったー。昨日は忘れちゃったから、土砂降りの中走って帰ったんだよー)
(知ってるよ)
(え、なんで)
(見たからね)
(見たなら声かけてよ!恭ちゃん昨日も傘無かったの?)
(昨日は持ってたよ)
(えー…入れてくれたらよかったのにー……)
(入れてあげようと思って声かけようとした途端にどっかのだれかさんが土砂降りの中に飛び出していっちゃったからね)
(あー…)






あとがき→





つぎ



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