わたしは、山本が好き







でも彼はみんなの人気者で、誰にでも優しい。






そう、誰にでも優しいのだから









勘違いしちゃいけない。






















「なぁ名前!」


山本が笑顔でわたしを呼ぶ。
それだけでわたしはかなりドキドキしちゃうけれど、気付かれちゃ駄目。
彼にはこの気持ちを伝えちゃいけない。


『なに?』


普通の顔出来てるかな…




山本は少し他愛のない話をして、最後に



「放課後、空いてるか?」



と、言いづらそうに訊いてきた。
特に用事はないのでそれを伝えると、部活が終わるのを待っていて欲しいとのこと。

『いいよ、教室で待ってる』


そう言うと、山本はほっとしたように肩の力を抜いていつもの笑顔を見せた。





山本の笑顔が凄く好き





いつも沢田くんや獄寺くんに向けている笑顔が好きで、ついつい眺めてしまう。


その笑顔がわたしに向けられるなんて思ってなかったな…




でもこの笑顔はみんなに向ける笑顔と同じもの。






わたしにだけじゃない


























放課後の誰もいない教室で、山本を待つ。窓からグラウンドの野球部を見下ろすと、山本が見える。


静かな教室は徐々に橙色に染まり、わたしの影を伸ばした。



野球部は週末に練習試合があるそうで、今日も一生懸命練習していた。





山本も凄く頑張っているのがわかる。






やっぱり、山本が好き





でも思い知ったから


勘違いしちゃいけない

わたしだけ、なんてのはただの思い上がり



グラウンドの周りを見れば、沢山の女の子。
練習が終わったのを見計らって、タオルや差し入れを渡そうとする彼女たちにも山本は笑顔を向けるだろう。


それは見たくなくて、窓を離れて自分の席に突っ伏す。




山本は誰にでも優しい


非の打ち所のないような彼の特別になんてなれやしない


この想いは無かったことにしないといけない














「わりぃ名前、遅くなっちまった!」





肩で息をしながら山本が教室へ入ってきた。




…走ってきてくれたみたい




『気にしないで』



あなたのそういう優しさが、今はとても辛いの。





そういえば、何故わたしを待たせていたんだろう。

訊ねようとしたわたしを、山本の真っ直ぐな目が捉えた。



『やま、も…と?』





「あのさ、俺…名前のこと好きなのな」











聞き間違いだろうか



山本が、わたしを







好き?






「実は結構前から好きで……って、え!名前!?」







信じられない


有り得ないと思っていたことが、今起こってしまっている。


わたしは溢れ出す涙を拭うことも出来なかった。




山本はわたしの頬に手を添えて、そっと涙を拭ってくれた。
それから、わたしが泣き止むまで何も言わずに優しく抱き締めてくれた。





















わたしが落ち着くと、山本がゆっくり離れて少し意地悪そうに笑う。




「まだ返事、聞いてないぜ?」



『い、言わなくてもわかるでしょっ!』



「わかんねーのなー」












そしていつもの笑顔で



























「俺のこと、好き?」

















答えは








2







(選択肢は)



(はい、か)



(うん、か)













(好き)














あとがき→






つぎ



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