お昼を食べた後の授業程、眠いものはないだろう。
これでもかと長い欠伸をしている私を置いて、淡々と進んでいく授業。黒板に滑るチョークの音と、教科書を読み上げる先生の声が教室に響く。

黒板に書かれた文字を、そのままノートへ書き写すだけで頭に入るはずもない。
そんな今の気分には『退屈』という言葉がぴったりだった。それ以外の何でもない。ただただ、ひたすら退屈だった。


思わず、はぁ…と溜息が漏れる。
ノートに書き写していた手を止めて、ふと顔を上げた。

周りが黙々と、ノートと黒板を交互に目をやっている中、へたり、と机にうつ伏せになる姿があった。

通路を挟んですぐ隣の席の彼は、綺麗な寝顔をこちらへ向けて気持ち良さそうに眠っていた。


(かわいい…)


素直にそう思ってしまう程、彼の寝顔は可愛らしくて、でも瞼にかかる前髪はなんだか色っぽくて、時間なんて忘れてしまうくらい、ずっと見つめていた。


すると、まだ眠たそうな瞼が上がり、彼と視線が交わる。ずっと見つめていたのがバレてしまったのではないかと思い、思わず「あっ、」と声が漏れる。

すると彼は少し困った表情をして、


「真ちゃんには内緒ね、」


と小声で囁く。

彼の言う真ちゃんは、前の席の緑間くんの事で、授業中なんかに居眠りをしたら軽く小一時間は説教をしてくると思われるであろう、彼が一番行動を共にしている人でもある。


「今日は寝不足?」


寝ちゃうなんて珍しいね、なんて私が言えば、緑間くんの方をチラッと横目で見て、聞こえていないのを確認しながら、さっきよりも更に声のボリュームを落として、まるでコソコソ話をする様に、口元に手を添える。


「実はさぁ、ゲーム終わらせるタイミング失っちゃって、つい朝方まで…ね、って、これも真ちゃんには言うなよ?」


そりゃ緑間くんには言えない訳だわ、と心の中で納得してクスクスと笑うと、彼は口元に人差し指を当てて、



「だーかーらっ、二人の秘密。な?」



悪戯に笑う彼に、コクリ、と頷く事しか出来なくて。代わりに、どくん、どくん、と鼓動が痛い位に音を立てた。


その時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、周りが帰り支度を始めると、席を立った彼が私の耳元に手をやって


「あとさ、あんな熱い視線で見つめられたら、さすがに目覚めちゃうぜ〜」
「なっ…!」
「次は二人っきりの時にな!」


じゃあなー!とニヤニヤしながら緑間くんを引っ張って行く姿を見送った後、一人でさっきまでの出来事を思い出して顔に熱が集まるのが分かった。


「恥ずかし…」


気づいた頃には、私はとっくに恋に落ちていた。



隣の席の高尾くん
「あ、落ちた…消しゴム取ってー」
「ひゃいっ…!」
「ひゃって…何今の…っぶははは」
「わ、笑わないでよ!ほら消しゴム!」
「あーさんきゅ、はぁー…かわい」
「っ!?」




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高尾ちゃんはサラッと可愛いとか言っちゃう系男子だからね、クサイ台詞も似合っちゃうような彼だからね、すごく好き。高尾ちゃん高尾ちゃん。

読んでくださってありがとうございましたー!




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