09


「やっと正室を迎える気になりましたか!」
「…はぁ?」
「あーよかったー、これで徳川家の名は継がれますな。ああよかったよかった」
「ち、違うぞ忠次っ、彼女は…」
「ふふふ照れなくてもよいですぞ竹千代様」
「忠次、人の話を…」
「さて!今夜は馳走を用意せねば!皆(みな)に知せにまいりましょう」
「おいおい待ってくれっ」
「どうされました?」
「彼女は…って何をしているんだ?」
「へ?」

頭を抱えた状態だった私は、話しかけられて顔をあげる。
すると私を凝視する顔が二つあった。

「あ、いや、なんでもないですよっ」

慌てて両手を振る。
ああ、これでさらに変な奴だと思われた…

「彼女はだな…そういえば名前を聞いてなかったな」
「えー、殿ー、いくら一目ぼれしたからって攫ってはなりませぬぞ」
「攫ってはいないぞ!落ちてきたとこをわしが受け止めたんだ」
「落ちてきたって、またお転婆な姫様ですね」
「だろう?わしも驚いた」

はははははと二人は笑う。
どうもすみませんね、空から落ちてくるようなお転婆娘で
って、それよりも!私別に姫じゃないですよお二方!!ただの一般人ですって
この誤解は早急に解かねば!
後々になってばれたらきっと殺される
でも『未来からきましたーえへ』って言ったらそれはそれで殺されそう…
ど、どうしたらいいんだ!姫って嘘つくか、未来からきたって正直に言おうか…

「名前を聞いてもいいだろうか?」
「え?…ななし、ごんべです」
「ななし…聞かない名ですな」
「はははっ忠次聞いて驚くな?彼女は未来からきたんだ!」


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