「まったく…あなたは何をしているんです」
「…ごめん」
「毎日共に過ごしているのでしょう?」
「…うん、ごめん」

誰…?
景時様と、誰かの声がする…。


06


「ん…」

目が覚めるとそこは私の部屋だった。
あたりを見渡そうと首を横に向けると、ぼた、と何かが私の頭から落ちた。

「…濡れてる」

どうやら濡れた布が私のおでこに乗っていたようだ。
まさか、これ、景時様が…?
そう思った瞬間涙がでそうになった。
こんなこと景時様が私にしてくれるはずがない。
いや、でもこの邸には私と景時様しかいない。
誰か他に薬師の方がいらしてる…?
でももし景時様だったら…
熱で回らない頭でぐるぐると考えていると、急に襖が開いた。

「…起きてたんだ」
「かげ、ときさま…」

声が掠れた。

「あ、起き上がらなくていいよ。体、辛いでしょ」
「…はい」

景時様は私の布団から一尺離れた場所に座った。
私は怖くて景時様を見れない。
たくさん迷惑をかけてしまった。
今まで以上に嫌われていたらどうしよう。

「弁慶…薬師がしっかり薬を飲んでよく寝たら、すぐによくなるって、言ってたよ」
「そうですか…すみません、迷惑をかけて…」

…怖い。
出てけと言われたらどうしよう。

「いや…俺の方こそごめん」
「…え?」

何故…?景時様が謝るの…?

「結構前から体調崩してたみたいだね…気づけなくて、ごめんね」
「そっ、そんな景時様は悪くないっ…で、す…」

声を荒らげて景時様を見ると、いつもの凍えるような冷たい目ではなく、少しだけ、少しだけ優しさの含んだ翠色の瞳が私を見下ろしていた。

「ほら、おとなしくして」

そう言って景時様は私のおでこに右手を乗せる。
…冷たくて気持ちいい…
いつも景時様の手は冷えてるのかな…?
もしかして洗濯か、食器の片付けをしてたからこんなに冷たくなってしまっているのかも。
ああ…ごめんなさい。
私が風邪なんかひいたから…

「…まだ熱あるね。換えの布持ってくるよ」
「あ…、まって」
「え?」
「あ」

呼 び 止 め て し ま っ た。
どうしようどうしよう。
景時様の冷たい手が離れるのが嫌だったから…つい。
でも、もし許されるのならば、手を。
景時様の手を…。

「…どうかした?」

言え…!
言ってしまえ、私!
今だけ、今だけだから…この瞬間だけ…っ

「今、だけ…一寸の間だけでいいので…手を、景時様の手を乗せたままに…してください」

言ってしまった…。
調子に乗るなと怒られるだろうか。
私はぎゅっと目をつむり景時様の反応を待つ。

「ん…いいよ」
「ぁ…」

景時様の冷たい手が再び私のおでこの上にのる。
…きもちいい

「ありがとう、ございます…」





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