「げほっ…ごほっ、ごほっ…ごほっごほっ」

風邪…ひどくなってる。


05


あれから数日たった今も、風邪が治る気配は一向に無い。
むしろどんどん悪くなる一方だ。
洗濯をしている最中だが横になりたくて仕方がない。

「う〜…つらい…」

これは薬師のところへ行かないと駄目だなぁ。
でも京の薬師がどこにいるのか知らない。
誰か道行く人に聞かないと…。

「あ…だめだ…」

もう立っているのがつらい。
なんとか洗濯物を全部干して、ふらふらと縁側に腰掛ける。

「気持ち悪い…」

頭の中がぐわんぐわんする。
だめだこれは寝ないと。
もう布団に行くのもつらい。
このまま寝ちゃおう…。





ガタガタッ。

「ん…」

物音がして目が覚めた。
きっと景時様が帰ってきたに違いない。
お出迎えしないと。

「っ…」

頭がガンガンする。
あ、洗濯物取り込んでない…夕餉も作ってない…。
景時様にまた嫌われてしまう。
これ以上嫌われるのは嫌だなぁ…。

ふらふらになりながらも玄関に向かう。
あの角を…あの角を曲がれば…。

「あ…」

バターンッ!
角を曲がった所で力尽きて、倒れてしまった。

「った…」

はやく、早く立ち上がらなきゃ。
景時様に迷惑が…

「…あ、れ?」

起き上がろうにも体に力が入らない。

「う…」

意識も朦朧としてきた。
最早立っているのか横になっているのか分からない。
世界がぐるぐる回る。
気持ち悪い。

「ちよちゃん?!」

え…?

「ちよちゃん!!しっかりして!!」

景時様が走って私に駆け寄ってくる。
景時様が、景時様が私の名を呼んでいる…

「っ…すごい熱だ…」

今…景時様の手が、私のおでこに…?
ああ…これは夢だ。
夢に違いない。
そうでなければ景時様が私に触れるなどありえない。
私を抱き起こすなどありえない。

「弁慶に見せないと…っ」

ごめんなさい…
夢の中でも景時様の手を煩わせてしまって

「弁慶の所へ…いや、この状態じゃ無理だ。弁慶を呼ばなきゃ…っ」
近い。
景時様がこんなにも近い。
こんなにも近くで景時様の声が聞こえる。
嗚呼…うれしい…
うれしくて涙が止まらない。
ごめんなさい。
迷惑をかけているのに嬉しいなんて…

「ごめ…な、さ…」

夢ならこのまま覚めないければいいのに…




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