「よしっこれにしよう…」


08


数日、悩みに悩んだ結果、首飾りを買った。
玉(ギョク)の色は桜色。
朔様の耳飾りと同じ色。
朔様が鎌倉に帰ってしまい、きっと景時様は寂しいと思っている…と思う。

「あーでも、女らしすぎるかな…」

今更になって少し後悔してきた…。
でも着物の中に隠れれば大丈夫だろう。
鎖も長いから玉が視えることはない。

「はず…」

そして一番の問題は受け取ってもらえるかどうか。
受け取った後捨てられてしまうのはかまわない。
いや、それも堪えるけれど、やはり面と向かって「いらない」と言われたら…泣く。
景時様の前では泣かないと決めているが、さすがにその場で泣いてしまうだろう。

「いつ、渡そう…」




カチャ、カチャカチャ。
食器と箸があたる音が部屋に響く。

「………」
「………」

結局、景時様が帰ってきたときには渡すことができなかった。
いつ、いつ渡そう…。

「あ…」

弁慶さんのお礼、すっかり忘れていた。
景時様のことで頭がいっぱいで、まだお礼の品も買えてない。
その上弁慶さんのことを聞くことも忘れていた。

「あの、景時様」

静かにご飯を食べる景時様に声を掛ける。

「……なに?」
「弁慶さんは…どこに住んでいますか?」
「…聞いて、どうするの?」
「この前のお礼がしたくて…」

景時様は私に顔を向けず、ご飯を食べ続けながら話す。

「いいよ。お礼は俺がしとくから」
「でも…」
「ご馳走様」
「あ…」

景時様は音を立てずに立ち上がり、早々に部屋を出て行こうとする。
どうしよう。
今、今なら渡せる。
足元に置いておいた首飾りを包んだ布をぎゅっと握る。
待って。
行かないで。
私…っ。







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