おかしい。何度寝返りをうっても、眠れない。午後に飲んだコーヒーがいけなかったのかな。目を閉じたまま枕元を手探りで時計を探す。
「んー、もう1時…?」
たしかベッドに入ったのは11時くらい。かれこれ2時間、わたしは眠れずにいたのか。
それにしてもやっぱりこのベッドは少し硬い。それともまだ慣れていないだけ?
地元から1人上京してきて、初めての一人暮らし。わからないことだらけで、四苦八苦。それでも夜はいつでも安心して寝られていた。
「んー…やっぱ、あれがないと眠れないのかな…」
仕方無しに温いベッドを抜け出して、リビングへ。
ソファーには自分の3分の2くらいはあるだろう、大きなテディベア。ちょっと右目と左目の高さが違うはご愛嬌だ。独り立ちしないと、と決意して部屋の外に出してみたけれど、この調子じゃ独り立ちする前に寝不足で倒れそうだ。
ギュッと抱き締めて思い切り息を吸う。
「ん、晃《こう》のにおい・・・」
付き合い始めた頃にもらった、最初のプレゼント。晃が部屋に来る度に触ったり抱き締めたりしていたから、そこには晃の匂いがしっかりとしみついている。わたしが1番、落ち着く匂い。
ベッドに入って思い切りテディベアを抱き締めるけれど、なんせ大きいから体格的にはまるでこっちが抱き締められている感じになる。暖かい抱擁感と慣れ親しんだ懐かしい匂いに、脳はすぐさま睡眠へ。
夢の中だけでも会いたい、なんてね。
君を抱いておやすみを
(大好きだよ、晃)(俺はいつでも、傍にいる)
-end-
提出→
聖女のメランコリー様
お題→『貴方がいないと、眠れない』
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桜宵 (
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