「はい、終了。後ろからテスト回してください」

腕時計を見ていた顔を上げて藍堂(あいどう)先生はいつもの笑顔で言う。
毎週月曜日に行われる英単語テスト。
最前列のわたしは後ろからテストが回ってくるのが遅い。

「愛花(あいか)テストどうだったー?」

テスト終了後独特のざわめきに紛れて後ろの紗希(さき)が聞いてくる。
今回はいつもよりも単語の数がちょっと少なくて、結構な手ごたえ。

「まぁまぁかな」

と振り向かずに答えながら、シャーペンは名前の欄へ。
"三浦(みうら)愛花"と書かれた名前の横に、薄く小さな暗号を。
前まで回ってきた列のテストを回収している藍堂先生を覗き見る。

わたしの一方通行の想いが詰まった、精一杯の暗号。
誰にも秘密な気持ちと、ささやかな告白。
高校2年生になって藍堂先生に出会ってから、毎回の英単語テストで続けている。


気付いて

うそ

気付かないで


「まったく三浦さんは、また落書きして」

最前列まで回ってきたテストを回収するとき必然と1番表になるわたしの名前欄を見て、藍堂先生は柔らかく笑った。

あーぁ、道のりは遠いや。
とりあえずは早く、卒業しちゃおうか。


秘密の白、届いてますか?
(んー"RG"ってなんだろう)(パソコンのキーボードでも見てみたらどうですか)(え?)


-end-



提出→ピンクの魔法様
お題→『テスト』『一方通行』『暗号』


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