「うおおおおお!スピード!」

「これだあああああ!」

「ああああ!ジャックこのやろう私がカードを置けないように…!」

WRGPで優勝を目指すオレ達は、毎日仕事とD・ホイールの調整に励んでいた。
今日オレは、久しぶりの休日をこのガレージで満喫していたつもりだった。

「ハハハ!遅いわ!」

「あああああ!!」

それをこの二人ときたら…

「うるせえええ!お前ら少しは静かにしろ!」

ガレージにオレの怒声が響く。
怒られた二人、ジャックと友紀はというと、一瞬黙ってこちらの様子を窺ったものの、すぐに向き直り、ゲームの続きを始めていた。

「隙あり!」

「ぬわあああああ!友紀!貴様今のは反則だぞ!」

「よそ見してるジャックが悪いんだもんね」

「フ…フハハハハ!」

「何を笑っていやがる!?ジャック・アトラス!」

「オレを出し抜いたこと、さすがだと言いたいが」

「アマイ=ゾ=友紀!」

「なに!?」

「貴様の手はこれで尽きた。だが、オレのフィールドにはジャックに続くクィーンが残っている!」

「ジャックがジャックって言うと変!」

「そしてさらにジャックを場に召喚し、10、9、10!これでオレの勝ちだ!」

「くうううう!悔しいいいい!またアホラスに負けたあああ!」

「アホラスだと!?」

近くには行っていないためここからはわからないが、話の内容からどうやらジャックと友紀の二人はトランプでスピードをして遊んでいるようだ。
今はジャックが勝利したことで、友紀が頭を抱えて悔しがっているのが見える。

イライライライラ…

オレは遊星とブルーノがオレ達のD・ホイールの調整をしている後ろで、はぁ、と重いため息を吐いた。

「こんなにウルセー中よく平気でいられるよな」

オレの呟きは遊星に聞こえたようで、遊星はパソコンを弄りながら「いつものことだ」と言う。
こんな騒がしいのをいつもあの二人はやってるってのかよ。そして遊星とブルーノは完全無視かよ。

「ジャック!今度は大富豪で勝負よ!」

「フン!臨むところだ!」

オレはもう一度ため息を吐き出すと、そのままうな垂れた。
例の二人はお構いなしに二回戦目を始めようとしていて、オレはおもむろにソファから立ち上がる。
このままここにいたんじゃ疲れがとれねえ…。散歩にでも行こう。

ふらふらとガレージの外へと向かう足。
それはジャックの一言で止まることになる。

「クロウ!暇なら付き合え!大富豪は二人でやってもつまらんのだ!」

「暇…だと?」

くるり、ジャックと友紀を振り返る。
今のオレは相当怖い顔をしているだろう。
眉間に深く皺が刻まれているのが自分でもよくわかる。
事実、振り向いたオレの表情を見たジャックと友紀は、冷汗を流してオレから視線を外したのだ。

「ヨ、ヨーシ、ジャックコンドハワタシガカツ」

「キ、キサマニマケルオレデハナイワ」

本能的にまずいと悟ったのだろう。二人はギクシャクした様子でトランプをシャッフルし始めた。

「おいこらニートども…」

ビクッ
オレの呼びかけに二人の肩が揺れる。
トランプをシャッフルしていた手も動きを止めた。

「あの…クロウさんお顔が大変恐ろしゅうございます。マーカー多いから余計に…」

「フン!オレに合った仕事がない以上仕方あるまい!」

視線を逸らしたままそんなことを言う二人の胸元をグイッと掴み上げる。

「オレは毎日毎日仕事で忙しいんだよ!今日はせっかくの休日だから疲れをとろうと思ってたっていうのにお前らときたら…」

「……!」

「ギャーギャーうるせーわ仕舞いには暇なら遊びに付き合えだと!?」

「…ぶっ!あはははは!もう我慢できない!」

怒りに任せて言葉を発していたその時、急に友紀が笑い出したため、オレは次いで出かかった言葉を飲み込んだ。
なんだっつーんだよ。

「クロウ!仕事に関してはごめん、頑張って探す…んだけど…!ジャックが…!クロウに胸元掴み上げられてるのに屈んでてっ…!やだ面白い…!」

「フン、それはオレもいつ言おうか迷っていたところだ。この体勢は正直キツイのでな」

「…………」

こいつら…!
オレが一番気にしていることを…!

「クロウ、もう少し牛乳を飲むんだな」

「ごめんっクロウごめん…!でもダメなの面白すぎるの…!」

「キングの体勢はエンターテイィメントでなければならない!」

「元キングでしょ」

「元キングだと!?」

「じゃあキング…」

「キングではない!」

「どっちだよ!あはは!ジャック面白すぎ!」

「く…まあ、面白いと言われて悪い気はしない。許してやろう!」

ちくしょー…人に胸元掴まれてる状態で何を楽しそうに…
くそ…くそ…くそ…!

「バカップルのバカヤロー!!!」

オレは滝のように涙を流してガレージから飛び出した。
振り返りざまに見た二人の顔は真っ赤に染まっていて、

「リア充爆発しろおおおおおおお!!!」

渾身の力をふりしぼってそう叫んだのだった。





end.







4万HITありがとう企画!
リクエストの台詞は「アマイ=ゾ=○○!」で、あみだ結果はジャックでした。
美里さんリクエストありがとうございました!


(20110911)


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