オレは今、友紀のYEAH!の前に立っていた。
両足を開き、重心は前へ。腕にシルバーを巻き、腕を組みシルバー、仁王立ちルバー?いや、デュエリスト立ちルバーだ。
(途中からシルバーしか頭にないじゃないか!)
ありがとうAIBO。今日もツッコミが輝きんぐだぜ。
(新主人公の台詞を早くも強奪しないでよ)
流行に敏感なんだぜ。
よし、準備は整った。今日こそかっとビングだぜ!オレ!
(新人イジメを垣間見たよ、ボク)
何故オレが友紀の家の前で3時間こうしているか?
ふははは。それは、オレは今日こそ、友紀に告白をするからだ。
今までいざとなってもなかなか言い出せなかった愛の告白。
AIBO、オレはやるぜ!今度こそ!
(ごめんその心の中の台詞もう176回目だよもう一人のボク)
一分間に一回ペースとはな!
(もういい加減心を決めて、友紀ちゃんに気持ちを伝えにいきなよ!)
AIBOはそう言っているが、オレは一ヶ月前から心を決めていた。
今日この日、友紀に告白すると。
今までいざとなってもなかなか言い出せなかった愛のこ
(これで177回目だよ!)
ふう。オレは心を落ち着かせるためゆっくりと息を吐き出した。しかしその前に吸うのを忘れていたので酸欠になった。くそ!トラップカードか!
…………?
……ついにAIBOがツッコミを放棄するようになってしまったため、オレは深呼吸をし、友紀の家の友紀の部屋の方へ、鋭い視線を向けた。
オレは言う。今日オレは、友紀に気持ちを伝えるぜ!
「だ…だぁいしゅきだ!」噛んだ。
友紀は部屋から姿を見せない。
聞こえなかったのか?それとも、噛んだのがばれていないと喜ぶべきか、オレにはもう、わからない。
(え、今君何か言った?)
あ、ああ。大好きだと…友紀に。
(え!?ここから!?友紀ちゃんを呼び出して直接告白するんじゃなかったの!?)
これも直接の告白だぜ!
(絶対部屋まで聞こえてないよ!ボクだってギリギリ聞き取れたくらいのボリューム…)
「遊戯?」
ゑ?
突然背後からかけられた声に、オレは反射的に振り向いた。
「友紀!?」
そこにいたのは片手に買い物袋を提げた友紀で、オレは驚きのあまり友紀の家の塀まで勢いよく後ずさる。
「あ、いきなり声かけてごめん…」
「いや、そうじゃないんだ!ただ少し驚いただけだ!」
まずい。友紀は部屋にいるものと思っていた。まさか、買い物帰りに出くわすとは思わなかったぜ。
それより、気になるのは、さっきの言葉は、友紀に聞こえたのか…?
聞こえていたら、冗談じゃなくヤバいって!
「友紀…」
「なに?」
「友紀は…オレがさっき言った言葉…」
冷汗が、頬をつたう。
緊張しているのが手に取るようにわかった。
「あ、さっき遊戯が、だい…」
「うわあああああああああああああああああ!!」
「遊戯!?」
(ええええええ!?もう一人のボク!?)
オレは走った。
友紀から逃げるように全速力で。
チラ、と後ろを振り返ると、慌ててAIBOがオレを追ってくるのが見える。
AIBOのYEAH!に着くと、オレはAIBOの部屋へ駆け込んだ。
(いきなり走り出してどうしたのもう一人のボク!)
「AIBO!!友紀に聞こえていたぜ!オレはついに、友紀に告白を…!」
そう、オレは、
「告白したZEEEEEEEEEE!!YEAAAAAAAAAH!!!」
大きくガッツポーズをし、ベッドにダイレクトアタックをする。
ベッドの上でバタバタごろごろしながら、達成感と、気恥ずかしさに包まれた。布団にも包まれた。
今日一日緊張で疲れ切っていたオレは、そのまま今日という素晴らしい日にターンエンドしたのだった。
(これでいいの!?)
翌日。
教室の扉を開くと、オレは真っ先に友紀の席へ駆け寄った。
途中海馬がデュエルを申し込んできたが、生憎オレは友紀との心のデュエルがあるため無視した。
「あ、遊戯おはよう」
「YO!」
告白をした翌日ということもあり、友紀の顔が直視できない。
初恋の時のような感覚だ。
友紀も心なしかオレを見る目が変わっている気がする。可愛いぜ!
「友紀…その、返事を聞かせてくれ」
「え、返事?」
「ああ、その…昨日の…だい…」
「ああ!遊戯も、好きだったんだね!」
「な!」
遊戯“も”!?遊戯も好きだったということは、その後に繋がる言葉はこうか!
「私も前から遊戯のこと好きだったの」…間違いないぜ!
昨日は勝負シルバーを巻いて行ってよかったぜ!
「車!」
「ゑ?」
オレは次いで友紀が発した言葉の意味が、わからなかった。
「遊戯が昨日うちの車を見て嬉しそうにダイ○ツだって言ってたから、遊戯も好きなんだなーと思って」
「………」
「私の家族皆ダイ○ツ派だからさ!」
オレの両手を包むように握り、キラキラと瞳を輝かせる友紀に、オレはもう何も言うことはできなかった。
(ドンマイ…もう一人のボク…)
end.
4万HITありがとう企画!
リクエストの台詞は「だぁいしゅきだ」で、あみだ結果は王様でした。
カズさんリクエストありがとうございました!
(20110910)
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