授業も終わり、放課後になった。
私は荷物をまとめ、憂鬱な気持ちで窓の外へ目を向ける。

ザー ザー

激しく降る雨…。
あんなに朝は晴れてたのに、と傘を持って来なかった自分を少し恨んだ。


*****


授業が終わり、真っ先に江音子の元へ視線をずらすと、江音子は外を見てため息を吐いていた。
傘を忘れたんだな。オレはチャンスとばかりに江音子の元へと向かう。

「江音子」

「あ、海馬。お疲れ」

「今日は貴様を家まで送っていってやろう。貴様のことだ。雨が降るとは知らず傘を忘れたのだろう」

「…げ。何で知ってるの」

「ふぅん、貴様のことなどお見通しだ」

「う…。ま、まぁその通りなんだけど。じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

「ふぅん、行くぞ」

よし、江音子を車で送っていってやれるのも、全てはオレが社長だからだ!ワハハハハ!
これからは江音子と密室で二人きり…ワハハハハ!考えただけでも笑いが止まらん!

「何ニヤけてんの海馬?あっそうだ!せっかくだからうちと家の近い城之内も一緒に…」

「な、何ィ!?」

バ…バカな!凡骨も一緒にだと!?認めん…!オレは断じて認めんぞぉぉぉ!!

「…と、思ったけど、そういえば今日城之内はバイトだった」

「…ふ、ふぅん。このオレが直々に送ってやると言っているのだからな、邪魔者は不要だ」

凡骨ごときがこのオレを焦らすとは…100年早いわ!

「いやー、今日は海馬が学校に来る日で良かったー」

嬉しそうに鞄を持ち、階段を下りていく江音子の後について行くと、すでに校門にはオレ専用の車がスタンバイしていた。

「瀬人様、お迎えに上がりました」

「ふぅん、ご苦労。もういいぞ。海馬コーポレーションへ戻っていろ」

「…は?」

「今日はオレが運転して帰る。オレの未来の妻となるべき女を送っていくのでな!」

言いながらオレは江音子の肩に手を回し…呆気なく避けられる。
っく…!照れ屋だな、江音子は。可愛い奴め。

「は…かしこまりました」

部下が慌てて走り去っていったのを見送ると、オレは隣の江音子を促し車に乗せる。
がはははは!これからオレと江音子の放課後デートが始まるのだ!アーッハッハッハッハ!

「海馬テンション高い」

「ふぅん、出すぞ。全速前進DA!」

見るがいい!江音子!オレのドライブテクニックを!
女は車を運転する男に見惚れると言うからな…これで江音子の視線はオレに釘付けだ!

チラリと横目で江音子を見ると、江音子はオレに見向きもせず窓の外を眺めていた。

「……あ、やんできた」

「江音子」

呼んでみても、んー?と返事をするだけでこちらに振り向きもしない。バカな!

「江音子」

「何ー?あ、雨やんだよ。通り雨だったんだね」

「kiss☆summer!!!」

「ちょ、何怒ってるの」

オレが怒声を上げると、江音子は目を細めてオレを見た。
ふぅん、やっとこちらを向いたか。
ハッ!まさか!江音子はオレに見惚れ恥ずかしくなり、視線をわざと外に…そうか、そういうことか。
昂ぶる…昂ぶるぞぉぉぉ!

「ふぅん、江音子。オレ達の間に今さら遠慮など…」

「海馬?…え、何?」

オレが言葉を止めて一箇所を見つめたまま動かなくなったためだろう、江音子がオレの見つめる先、窓の外へ視線をずらす。
そこには、


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