私の部屋のドアをバーン!と開け、海馬が現れた。

「江音子!今日が何の日か知ってるな!?」

「え、今日?…えっと、海の日?」

「そうだ!」

部屋に入ってきて早々目的のわからない質問をされ、尚且つ私が質問に答えると、わくわくした目で見られる。

「…なに?」

そんな、わくわくされても私には海馬が何を求めているのかわからない。

「海の日だぞ…?」

「うん」

「貴様、それが海馬の日になるとは思わなかったのか?」

海の日…海(馬)の日…?
むしろ何でそう思ったの?
さも当然とでも言うような海馬の態度についていけないと思いつつ、とりあえず海馬の言いたいことがわかった私は、立ち上がると海馬の側へ近付いた。

「おめでとう」

「…それだけか?」

つまり海馬は、(無理矢理だが)自分の日である今日に、何かをしてほしいのだろう。祝い的な意味で。
かと言って私がプレゼントなど用意しているはずもなく、祝いの言葉を伝えてみれば、海馬は不服そうに眉根を寄せる。

「そんなよくわからない日のためにプレゼントなんて用意してないよ…。あ、じゃあ今日海馬が休みなら、これから出掛ける?」

「ふぅん、プレゼントなどいらん。オレがほしいのは…」

海馬が私の耳元に顔を寄せ、

「キ・サ・マ……DA━━━!」

囁いた瞬間背筋に悪寒が走った。(最後は囁きではなかったが)
な、なんだコイツ気持ち悪い!

「海馬…どうしたの?」

「オレはどうもしない。ただオレの江音子への愛を伝えたくてね…。ボクはね、デュエルモンスターズでは、全国大会で優勝するほどの腕なの…」

「そうなの…」

なんというか、海馬がおかしい。
いや、いつもおかしいんだけど、今日はいつもとは違ったおかしさがある。
耳元で囁くとか、紳士的に歯の浮くような台詞を言うなんてことはしなかった。
ハッキリ言って、キャラが違う。

「か、海馬…何か変なもんでも食べたんじゃ…」

「君のクチビルに、甘いチョコの口付けを…」

「ダメだ、完全に様子がおかしい…」

どこから取り出したのか、板チョコ片手にふざけた台詞を吐く海馬。
そろそろ眩暈がしてきそうだ。
ああ、私が倒れたら全力で助けに来て、お母さん。こんな海馬と一緒にいたくない。

それもこれも、海(馬)の日が悪いとでも言うの…?
教〜えてオベリ〜スク。教〜えて、オベリ〜スク。教えて〜〜〜!

「海馬、とにかくいつもの海馬に戻ってよ」

「オレはいつも通りだ、ぞっ」

ちゅっ

………ゑ?

今軽いリップノイズが…。
頬に残るほんのり温かい…

ぎ、ぎゃああ…!

キ、キスされた!キスされた!キスされたああああ!

「か、海馬!?」

海馬に!あの海馬に!
今までは全力で阻止してたのにこうも簡単に!
絞り出した声が裏返ったのも気にしていられない。

「初々しい反応だな、江音子。そんなところも、好・き・DA━━━!」

「あああああ!落ち着け!落ち着け私!目の前にいるのは海馬じゃない!人間じゃない!ただのデュエリストだ!」

「さて、次はメインディッシュといこう。江音子、もちろん準備は、できているな?」

クイッと、AGOに手を添え上を向かされて、海馬と視線がぶつかった。
わ、わああああ…!頬にキスされたってだけで海馬に見られるのが恥ず、恥ずかし…!

「ばっ!か…かか、ばかいば!はな、はな、は…な…せ!」

も、もう何も考え考え考えられない!

「このコマンド入力は、指定したプレイヤーをタイムマシンにぶち込むことができる!元に戻れ海馬ぁ!」

混乱して頭がパンクしそうな中、突如現れた城之内によって私は無事、おかしな海馬から救出されたのだった。



海の日
(おい、しっかりしろ江音子!顔真っ赤だぞ!)
(あ、ああああ、あああもうダメ、はず、恥ずかしい…!)






海の日記念(?)
ちょっとMADネタ。


(20100719)


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