梅雨。
本来は雨が毎日降り続け、ジメジメして、テンションも下がる時期。
ニュースでは梅雨入りしたというけど、最近の異常気象のせいかあまり雨は降っていない。

今日は午前中は晴れていたものの、放課後になるといつの間にか雨が降り出していた。
ボクは朝天気予報を見てきたから、傘を持ってきている。

玄関まで下り、靴を履き、傘を持って外に出ると、そこには急な雨のため傘を持っておらず、雨宿りをしている人達がいた。

…あ。

その中に見知った顔がひとつ。

…江音子ちゃんだ!

どうやら傘を忘れて帰れないらしい。
よ…よぉし!ボクだってかっこいいところ見せてやるぞぉ!

ボクは傘を開くと、彼女の元へ歩いていき、そっと彼女の上に傘をかざした。

「!…遊戯?」

「傘、忘れたんだよね?せっかくだから、一緒に帰ろうよ」

「ありがとう。でも、悪いよ」

「気にしないで!ほら、帰ろう」

「あっ」

ボクは傘を持っていない方の手で軽く江音子ちゃんの手を引く。
江音子ちゃんは申し訳なさそうにしていたけど、しばらくするとボクにもう一度礼を言い、身を寄せる。

わああ、これってなんか恥ずかしい!
傘で作られた狭い空間に二人だけなんだ。

「なんか、緊張するね」

自分でしたことながら悶々と考えていると、ふいに、江音子ちゃんがはにかんだ。
それはまさしく今ボクも考えていたことで、

「え、江音子ちゃんも?」

「えっ」

「実は、ボクもなんだ」

自分の心の内を明かすと、ボクらは互いに笑い合う。
同じことを考えてたなんて、おかしいけど、嬉しいな。

(AIBOOOOO!!)

しかし、こういう時にはいつも空気を読まない人物が出てくるのだ。

(うわああああん!AIBOOOOOO!!)

……。

(オレも江音子と相合傘したいぜ!)

そう、もう一人のボクである。

(この先ずっとオレのターン!)

光を放ち始めた千年パズルから、もう一人のボクが出てこようとする。
ボクは慌てて千年パズルを外すと、

「千年パズル、射出!」

どこかへ向けて射出した。
AIBOOOOOOOO!!と遠くなる声を最後に、ボクは江音子ちゃんに向き直る。

「あの、遊戯…今光の速さで一直線に飛んでいったのは…」

「気にしないで!大したことじゃないよ!」

「もう一人の遊戯は…?」

「ドゥヒン☆」

気を取り直し、ボク達は再び歩き始めた。



「遊戯、私が傘忘れたのに持ってもらうの悪いから、あとは私に持たせて?」

たわいない話をしながら歩く途中、江音子ちゃんがボクの持つ傘の柄の部分に手を当てた。

「え、いいよ!」

「ううん、せめてものお礼!」

女の子に持ってもらうのは悪いし、ボクは慌てて断ったけど、江音子ちゃんに半ば強引に傘を取られてしまう。

…実際、ボクより江音子ちゃんは背が高くて、ボクが傘を持つのは少し辛かったんだけど、男だから頑張ってたんだ。
きっとそれが江音子ちゃんにも伝わってて、でも江音子ちゃんはボクのプライドを傷付けないためにお礼として傘を持つって…

「じゃあ、悪いけどぉ、後は任せたよ!ありがとう!」

「うん!」

辛かったのは事実で、ここは江音子ちゃんの好意に甘えよう。
でも、少し悔しい。

「よし!」

いつか、ボクが江音子ちゃんより大きくなったら、その時はボクが江音子ちゃんに傘をかざすようになる!
そうと決まれば、今日から頑張っていっぱいご飯を食べるぞぉ!男らしくなるんだ!
待っててよね、江音子ちゃん!



意気込み
(どうしたの?)
(あ、べ、別に〜…っ!あ、あそこにハンバーガーショップがあるよ!)






AIBOのほのぼのした感じが凄く好き☆


(20100626)


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