「デュエル開始ィィィィ!」
気合いの入った声が響く。
右手を高く上げビシッとキマったポーズをとっている彼は磯野さん。
KC社員で海馬の……秘書?なんだろうか。
サングラスに隠された素顔はまだ誰も見たことがないと専らの噂である。
話しかけたのはただの気紛れ。
磯野さんってどんな人なんだろう、とふと思っただけだ。
きっとダンディな人なんだろうな。
「磯野さんって普段はどんなお仕事をされてるんですか?」
「は…私は主に瀬人様の付き人…のような感じですかね。一般的に言うと秘書のような仕事かと」
「やっぱりそうなんですね。あ、磯野さんって、デュエルはどうですか?」
「そうですね…一応、ルール等覚えられるものは覚えております。トキメキ磯野☆デッキも作ってはいるのですが、お相手して下さる方もいなくて…」
「トキメキ磯野☆デッキあるんですか!?それなら私とおい、デュエルしろよ、磯野さん!」
磯野さん審判やってるからもしかして、と思ったけど密かにデッキを作ってたんだ!
磯野さんのデッキ…トキメキ磯野☆デッキ、どんなデッキなんだろう。凄く気になる。
「しかし瀬人様のお許しがなければ…」
「大丈夫です!私が言っておきますから」
サングラスで隠れてあまり表情が読み取れないが、少し困っているであろう磯野さんを強引に引っぱって、海馬コーポレーションのデュエル場に連れて行った。
ごめん磯野さん。
「デュエル開始ィィィィ!」
磯野さんの号令で始まったあたし達のデュエル。
なんだ、磯野さんノリノリじゃん。
デュエル中、磯野さんはなんというか、海馬に似た仕草をよくしていた。
きっと海馬をリスペクトしているからなんだね。
「わはははは!がははははは!」
大笑いする磯野さんは普段では考えられない。
磯野さんが着ているスーツも何故か腰辺りから左右に開き、重力に逆らっている。
「よし、あたしはヴァンパイア・ロードを召喚…」
「待て!端瀬江音子!違反行為と見なし失格にするぞ!」
「ええっ!?」
審判な磯野さんと海馬な磯野さんが入り乱れるデュエルは、10分くらいで幕を閉じた。
デュエル後、あたし達は近くのベンチ、もとい観覧席に腰を下ろしていた。
「いやぁ、磯野さん、私別人かと思いましたよ」
「あ、そうですか?すみません、私も初めてのデュエルで舞い上がってしまい…」
磯野さんと少し距離が近付いた気がする。
目の前の磯野さんは照れているのか、頬がほんのり赤く染まっていた。
「磯野さんって、凄くダンディなイメージだったんですけど、実はお茶目で格好良いんですね!」
素直な感想を述べると、磯野さんは恥ずかしさが増したのか、今度は顔を手で覆う。
サングラスしてるからあまり意味ないけどね。
「いやはや、こんなことをしていると私も瀬人様に怒られてしまいますな。はっはっは」
「いやいや、海馬もこんなに元気な磯野さんにビックリしますよきっと」
互いに顔を見合わせ笑い合っていると、磯野さんの肩にぽん、と誰かの手が置かれ、
「…え?」
ゆっくり振り返った磯野さんの笑みは、後ろからあたし達を見下ろしている人物と目が合った瞬間、消え去った。
I☆SO☆NO(瀬人様ああああああ!)
磯野夢書いてしまった。
磯野あのヘリの回は凄くお茶目ですよね。
(20100611)
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