オレ達は近くのカラオケ店へと移動し、個室に入った。
こんな狭い部屋に江音子と二人きり…!緊張する…!

「何歌おう」

「江音子、悩んでるのか。ならオレの先攻!」

素早く選曲して転送すると、曲が流れ始める。
オレはマイクを持って立ち上がった。
すると江音子が驚いたのか、ビクッと体を震わせる。
お、始まるぞ。江音子、オレの熱い気持ちを聴いてくれ!


ガチャッ

…!?

サビの前まで歌ったところで部屋の扉が開かれた。
何なんだ!?

「失礼します。お飲み物をお持ちしました」

どうやら受付で頼んだ飲み物を店員が持ってきたようだ。
クッ!なんて最悪なタイミング!サビで江音子にオレの気持ちを伝えるつもりだったのに!

店員が飲み物を置いて出ていった時にはサビも終わってしまっていた。
しかし気を取り直して最後まで歌い切る。
歌い終わると同時に江音子を見ると、江音子は目を丸くしていた。

「…遊戯が歌うの初めて聴いたけど、なんかアイドルみたい!ビックリした!」

AIBO、江音子が言ってるのはどういう意味なんだ!あいどる?

(とりあえず褒められてはいるんじゃないかな)

やったZE☆
江音子にオレの熱い気持ちが伝わったのか!

(なぁに言ってんだよぉ)

「遊戯の意外な一面を見た気がしたなぁ」

「そんなに褒められると照れるぜ、江音子!あ、江音子は何歌うんだ?」

「遊戯見てたら選ぶの忘れてたよ。とりあえずこれでいいかな」

江音子がオレを見つめていた!?AIBO、やったぜ!

(よかったね。ほら、江音子ちゃんが歌うよ)

AIBOが言うと、曲が流れ始めた。
同時に江音子がマイクを持って口を開く。
この曲は…まさか!ラブソング!?ヤバイって!

江音子が歌い始めた。
うーん、思った通り可愛い声だぜ!

「江音子、お前の気持ちは伝わったZE☆」

江音子が歌い終えたと同時に、オレは江音子を抱きしめたい衝動にかられる。
しかし抱きしめる勇気はないので、グッと親指を立てた。

「(気持ち?)それは良かったよ」

(勘違いでも、もう一人のボクが幸せならいいか…)

江音子もAIBOも苦笑を浮かべてオレを見てる。
オレは今告白するべきなのか…!
教えてくれAIBO!

(もう、そうやってすぐボクに頼るのいい加減にやめてよね!たまには自分で考えなよ!)

「なっ!AIBOOOOOO!!!」

「えっ!何!?ビックリした!遊戯がどうかした?」

「…いや、何でもないぜ」


その後もこの狭い空間のためか、歌っていても話していてもオレは最後までドキドキし続けていた。
そのため終了の時間がくるのはかなり早かったように感じる。

「楽しかったね!」

「ああ!」

カラオケ店を出て、街中を歩く。
なかなかいい雰囲気じゃないか?
きっと今がチャンスだ!キメるZE☆

「江音子…ッ!!?」

ゴーンッ!!

「遊戯…っ!?」

江音子を抱きしめようとして彼女の方へ向かった瞬間、オレは脛(すね)を突如襲ってきた激しい痛みに思わず蹲った。

「う…足がァアア!足がァァアアア!!」

痛くて地面をのたうち回るオレ。

「…サレンダーだ!」

「大丈夫?」

「…ああ…!」

痛みがひくとゆっくり立ち上がり、何にぶつかったのかを確認する。
こんな意味☆不明のポールがこんな意味☆不明な場所にあるとは…。

「痛そう…!あ、そういえば私のこと呼んだけど、何かあった?」

ぃよしっ!気を取り直して江音子にダイレクトアタックだZE☆

(もう一人のボク、あんな格好悪いとこ見せた後にそれはやめた方がいいと思う)

「なっ!?何故だAIBOOOOOOOO!!!」

「!?…どっ…どうしたの?今日の遊戯なんかいつも以上に変だよ?」

「クッ……な、何でも…ないぜ」

「いや、なんか遊戯との間に何かあったみたいだし、今日は早く帰ってちゃんと解決?した方がいいよ?じゃ、私は帰るから、ちゃんと話し合ってね?また明日!バイバイ」

「ち、違う!ま、待ってくれ!江音子!」

オレが慌てて江音子を引き止めようとした時には、彼女はかなり小さくなっていた。
うぇぇ!?足速すぎるぜ!!

「AIBO…オレは……AIBOOOOO!!AIBOOOOOOOOOO!!!うわぁぁぁぁん!!」

(あそこで君が声出してボクを呼ばなければよかったのに、残念だったね。ドゥヒン☆)

江音子が帰ってしまった。オレはしばらく立ち直れそうにない。
オレは傷心したまま、AIBOと入れ代わったのだった。



デュエート
(AIBO、しばらくそっとしておいてくれ)
(君って奴は、相変わらずの豆腐メンタルなんだから…)






ATM=カラオケなのは、もちろんATMの中の人ネタです(・∀・)
ジャ○ーズですもんね、そりゃアイドルのようだと思うよ。


(20091126)


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