走っていったら意外と早く着いた。
江音子はまだ来ていない。遅刻か?

(当たり前だよ。今はまだ11時だよ?約束の時間は12時。君がはりきって早く来すぎなんだよ!ていうか、来るかどうかもわからないでしょ!)

そ…そうか。1時間前集合は当然だと思っていたんだが…。

(そんな人初めて見たよ、ボク)

まぁ、AIBOが口を利いてくれるようになったからよしとしよう。

しばらくAIBOと会話しながら待ち続けると、遠くから江音子が歩いてくるのが見えた。
なんだか神妙な面持ちだ。何かあったのか?

(え、あんな遠くなのに江音子ちゃんの表情見えるの?ていうか、来てくれてよかったね)

「オレは信じてたぜ!」

(ちょっと、声出したら注目の的だよ!)

AIBOに言われて周りを見ると、確かに注目されている。
あ、江音子が嫌そうな顔してUターンした。

「ま、待ってくれ!江音子!江音子!!」

オレは急いで江音子を追いかけ、江音子の腕を掴む。

「ちょ…恥ずかしいから大声で名前呼ばないでよね」

「す、すまない!」

オレが謝ると、江音子はこっちを向いてくれた。
私服姿の江音子にはドキドキするZE☆

「さぁ、行こうぜ、江音子」

「うん」

(ちなみに行き先は決まってるの?もう一人のボク)

もちろんだぜ!とりあえず昼食だろう!

「ここは、ハンバーガーショップ?」

「ああ、腹が減っては戦はできぬと言うだろ」

(もう一人のボク、確かにお昼はいいんだけど、告白するつもりのデートなんだからファーストフードじゃなくてせめてファミレスとかに…)

「あの、私ご飯食べてきちゃったんだけど」

「何ッ!?何故だ!?」

「いや、何故だ!?じゃなくて別にお昼一緒に食べようとか言われてないし、そもそも…」

「くっ…!」

「まぁ、遊戯がお腹減ってるなら食べよっか!」

AIBO、オレはミスを犯してしまった!

(あの誘い自体ミスだらけだよ)

しかしオレは朝から何も食べていないので、江音子の言葉に甘えさせてもらうことにする。

「ほういえふぁ、はっひ江音子は何ふぉ言ひかけはんは?」

「あの、口の中のものが無くなってから喋ってね?」

「ごくん。そういえば、さっき江音子は何を言いかけたんだ?」

「え、何が?」

「そもそも…とか言ってただろ?」

「ああ、そもそも、今日は私をデュエルのために呼び出したんじゃなかったのかなーって…」

「ゑ?」

(ほら!君が、お前にダイレクトアタックだZE☆とか言うからだろ!)

「デュエルディスクも持ってきたんだけど…」

言いながらカバンの中を開いてみせる江音子。
本当だ。

「もしかして、デュエルじゃないの?何か他の用事?」

「い、いや!」

江音子がオレの目を見つめて尋ねる。
そんなに見つめられると照れるぜ…!

(今がチャンスだよ!ちゃんとデートだってことを伝えなきゃ!)

「あの…だから…今日は……」

AIBOが応援してくれている。
言わなければ!頑張るんだ、オレ!

「デ…デ…ュエートのために呼んだんだ!」

「……?」

伝わらなかったのか?

(なぁに恥ずかしがってんだよぉ!何だよデュエートって!)

無理だ、AIBO!パス!

「…え?もう一人のボク!?」

「アレ、遊戯、代わったの?」

「(ボクに任せるなんて卑怯だよ!)あ、江音子ちゃん…お…おはよう」

「うん、おはよう」

江音子は突然交代したオレ達に少し驚いたようだが、AIBOに向けにこやかに挨拶を返した。
…嫉妬するぜ、AIBO。

「(君が勝手に代わったんだろ!)あの、もう一人のボクが江音子ちゃんを誘ったのは…」

「うん?」

「デートの誘いなんだ。わかりにくかったと思うけど」

言ってしまった。恥ずかしい。
江音子をチラリと見ると、またも少し驚いた表情を浮かべている。

(あとは自分でやりなよ、もう一人のボク)

「あ、AIBO…!」

オレが表に出された。ダメだ、照れて江音子の顔を直視できない。

「…え、アレってデートの誘いだったんだ。私てっきりデュエルの誘いかと…」

江音子をチラ見する。
意外とでもいうような表情だ。

「ま、いいんだけど。さ、次はどこ行くつもりなの?」

どうやらすんなり受け入れてくれたみたいだ。
…ということは、江音子もオレに気があるということか!

(いや、そういうのじゃないと思う)

「次は、考えてなかったZE☆」

「……じゃあどこに行こっか…」

「ぃよしっ!江音子、カラオケに行こうぜ!」

「遊戯カラオケ好きなの?」

「ああ、大好きだ!」

江音子の歌も聴きたいしな!
そこでオレの気持ちを伝えるぜ!


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