私は今日海馬と遊ぶ約束をしていて、KCに来ていた。
社長室のドアをノックすると、ドアの前で人が待っていたのかというくらい素早くドアが開く。

「…!?誰!?」

しかし、出てきた人物に私は目を見開いた。

「ふぅん、誰とは何だ。貴様の未来の夫、海馬瀬人だ」

「えええええ、海馬!?」

未来の夫ではないけど、海馬でもない。
だって、だって…

「何そのAGO!」

そう、彼の顔は到底海馬とは思えないほど崩れていて、AGOがかなりの鋭角なのだ。うん、かなり鋭い。
その重力に逆らったコート着てなかったら本当に誰かわからないくらいだ。

「何を言っているのだ。オレはいつも通りだぞ?」

「いやいやいや、おかしい。今日の海馬は海馬じゃないよ!主にAGOが!鏡見てみなよ!」

「まったく、騒々しい奴だ…しかしオレは貴様のそんなところも「いいから早く!」…ふぅん、仕方ない」

海馬が鏡の前に移動する。
そして鏡に映った自分の顔を見た瞬間、目を見開いた上口をぽかんと開けて固まった。

「!?」

やばい、かなり面白い顔してる。ただでさえ顔がおかしなことになってるのに口半開きって…!ダメだ我慢しなきゃ。

「く…くく…くすくす」

「貴様あああああ!何がおかしい!」

「ごめっ…!我慢…しよ……っ思った…けど…あはは…無理だ」

最終的に笑いを堪えることができず声を出して笑うと、海馬は顔を真っ赤にしてプルプル震え出す。
その顔で怒られても全然迫力ない…!

「瀬人様!」

「!?」

と、その時、ドアをバーン!と開けて磯野さんが入ってきた。
何やら慌てた様子で、顔を瞬時に隠した海馬に一枚の紙切れを渡す。

「差出人不明の手紙です!何やらおかしな内容が…」

「…わかった!わかったから今すぐここから出て行け!仕事の邪魔だ!」

「はっ!」

仕事してなかっただろ…と私がツッコむ暇もなく、磯野さんは言われるまま部屋を出て行ってしまった。

「何だこれは」

私も海馬の手にある紙切れを覗くと、そこには、

海馬コーポレーション社長である海馬瀬人、貴様に伝説の200話の呪いをかけた。
呪いを解きたくば女と接吻を交わしている写真を裏に記載した場所まで持って来い。

と、書かれていて、私は何故接吻?と首を捻る。

「……なるほど。ということだ江音子」

「え゙」

急に海馬に体を引き寄せられた。
海馬と目が合い、吹き出す。

「ぶはっ!ダメだ海馬の顔見ると笑う!AGOッ…!AGOってる…!」

「くっ…この屈辱許しません。磯野!カメラを用意しろ!」

「はっ!」

え、磯野さん一体どこから…!
カメラを手に部屋に入ってきた磯野さんはもう準備万端です、とでもいうような感じで、少しテンションが高いようだった。

「江音子、覚悟は良いな」

「ちょっ待っ…!…あの!何で接吻?ていうかそんなのしなくてもさっさとその場所に行って犯人とっちめてやれば良いのに…!」

「ふぅん、わかってないな」

「何が」

「大方犯人はオレと女が接吻を交わした写真を入手し、スキャンダルにしようとしているのだろう。一緒に歩いているだけの写真などでは何とでも言い逃れができる。しかしそれが接吻を交わす場面であればオレに女がいるという決定的な証拠になる。マスコミにその写真は相当高く売れることだろうな」

「あ、なるほど…」

さすが海馬だ。一瞬でここまで…。

「だがオレにとっては好都合だ。貴様との関係がバレようがオレには何の問題もない。むしろ世間にオレと貴様の関係を知らしめることができるのだからな」

「……」

ごめん、かっこつけてるようだけどAGOのせいで全然格好良くないよ。

「ふぅん」

ふぅんじゃないよ。

「オレと貴様の関係って、普通に同級生なんですが。言い方に語弊がありますよ海馬くん」

「そう照れるな」

ダメだこいつ早く何とかしないと…。

「江音子!心の準備はできたか?行くぞ!」

「だが断る」

スルリと海馬の腕から抜け出し、部屋の中を逃げる。
海馬がすぐさま追いかけてくるが(その顔で追いかけられるとホラーですね)、彼の腕をことごとく掻い潜り、

「待て!江音子!」

「誰がっ!」

ぽかんとしている磯野さんの後ろに隠れれば、勢い余った海馬はそのまま磯野さんに追突した。

「!」

「!?」

「あ」

瞬間、私の目の前に広がったのは海馬と磯野さんが接吻を交わしている光景。
慌てて磯野さんから離れた海馬は目を見開き、き、さ、ま、と弱々しい声を出した後、白目を剥いてその場に倒れてしまった。

「………」

「瀬人様あああ!」

すると、少し頬を赤く染めた磯野さんが(何故頬を染める?)倒れた海馬に駆け寄り、う…う…とうなされている海馬の肩を揺さ振る。
しかし海馬は顔を真っ青にして唸るだけで目を覚まそうとはしない。

「うーん、なんと言うか、ごめん、海馬」

気の毒な海馬を見てひとまず謝罪する私は、今回ばかりは、少し海馬が可哀想だなと思った。



200話の呪い
(ハッ!瀬人様!お顔が元に戻ってます!)
(え、まさか!ショック療法!?)
(う…うう…来るな…来るなぁぁぁ…)






伝説の200話だけDVD欲しいな(笑)
あのAGOは伸びますよね。
後日犯人はちゃんと捕まったようです。
海馬「なぶり殺しにしてくれる…」


(20100301)


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