「江音子、もっと腕にゴールド巻くとかSA☆」

遊戯の言った言葉を聞いた瞬間、私は持っていたマグカップを落とした。

「……」

「江音子、オレからすればまだ地味すぎるぜ!ゴールド巻くとかSA☆」

「…ハッ…!ごめん!こぼしちゃった…!今拭くね!」

「江音子、そんなことよりもっと腕にゴールド…」

「HA☆NA☆SE!」

「おっ…おい!江音子!」

遊戯が腕を掴んでくるから慌てて振り払い、タオルをとりに洗面所へ向かう。
遊戯の家は何度も来たことあるから場所はもう承知済みだ。

そんなことより、遊戯今なんて…?ゴールド?
遊戯はシルバー命じゃなかったの?
必要以上に焦りを感じている私。れれれ冷静になれ!
いやいや、遊戯がゴールドに浮気なんて…ねぇ?私夢でも見てるんじゃないかな…。
とりあえず頬を抓ってみたら、痛かった。

ああ、でも早く床拭かなきゃ。
部屋に戻ったら遊戯がいつも通りに戻ってますように!
そんな願いをしつつタオルを持ち部屋に戻ると、私に気付いた遊戯が笑顔を浮かべた。

「いっ…今床拭くね!」

慌てて視線を逸らし、床を拭く。ゴシゴシ拭く。もう大丈夫だと思うけど拭く。
…遊戯の熱い視線を感じる。

「江音子…もっと腕に「シルバアアアアアアアア!!!」」

先を聞くのが怖くて思わず大声を出してしまった。
遊戯が驚いて目をぱちくり…あれ?なんか…遊戯の肌が…浅黒い…?

「ゆ、遊戯?」

部屋を出る前はつけてなかったゴールドとかが遊戯の頭、耳、腕、足、いたるところについている。
あ、スカート履いてる。

「遊戯?誰のことだ?」

「あ、え?」

私が発した遊戯、という名前を聞き、目の前の遊戯は訝しげな表情を浮かべた。一体、何があったというの…?

「はっ!まさか!江音子、好きな奴がいるのか!?その遊戯って奴が!?」

「あの…」

「江音子!遊戯はどこだ!YEAH!!」

「……君、だけど」

あああ、肩を掴んで揺さぶらないで〜…視界がグラグラする。

「オレが遊戯?江音子、大丈夫か?」

「それはこっちの台詞なんだけど…」

「我が名は、アテム!それより、さっきから思っていたんだが、ここはどこだ?」

「……」

どこだかわかんないところに来ていきなり人にゴールド勧めてたのか。
それより、アテムって言った…?えっと、も、もしかして、3000年前の…?

「ファラオオオオオオ!?」

驚いてめちゃくちゃ大きな声が出た。
目の前の遊戯、いや、アテムもビクッと肩を震わせている。

「あ、ああ、そうだが、江音子、何だか肌が白く…」

わあああ、どうしよう、遊戯がどこかに行ってしまった!
というより何?これタイムスリップ?やっぱ夢?
どうしようどうしよう元の遊戯に戻さないと…!

「アテム!!」

ガシッ!とアテムの肩を掴んだら、アテムが目を見開いた。
お、驚かせてごめん。だけど…

「アテム、私、シルバー巻いてるアテムが好き!!」

「!!!」

「もっと腕にシルバー巻くとかさ!!」

「…!江音子…!」

そう言った瞬間、アテムは光に包まれた。
眩しくて目を瞑ると、次に目を開いた時にはいつもの黒いランニングを着た遊戯がいて、

「ゆ、遊戯?」

恐る恐る、彼の名を呼んでみる。

「ああ、そうだが、どうしたんだ、江音子?」

「遊戯…!ゴールドとシルバーどっちが好き!?」

「ゑ?そんなのシルバーに決まってるだろ?」

「!!…遊戯ぃぃぃぃ!」

ぎゅうっと、遊戯を抱きしめた。
遊戯が元に戻ったよ!やった!

「江音子っ…!?」

喜びのあまりさらにきつく遊戯を抱きしめると、遊戯は勢いよく鼻血を噴出し、ガクリと気を失う。

「あれ?遊戯?」

彼を揺さぶってみても何の反応もない。
だけど、本当に良かったよ。シルバー好きの遊戯に戻って!

あ、そういえばあの人の名前何だったっけ…?
…というか…冷静になってみると…私、あの恥ずかしい台詞言った…?
あの、シルバー巻くとか…って台詞を大声で…。
わああああ、恥ずかしい…!穴があったら入りたい!

自分の発した台詞を思い出した私は、顔を真っ赤に染め上げたのだった。



ウデゴル
(そうか、江音子はゴールドよりシルバーが好きだったのか。ぃよしっ!これからはシルバーを巻くぜ!)





アテムがシルバーに目覚めた瞬間。
ファラオのゴールド率は異常ですよね(笑)


(20100216)


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