「江音子〜」

屋上でボーッと空を眺めていると、背後から甘ったるい声が聞こえてきて、マリクが私に抱きついてきた。

「どうしたの、マリク」

何気に甘えん坊のマリク。初めて抱きつかれた時は驚いたけど、たまにこうして私に抱きついてくるから、今はもう慣れた。
人肌が恋しいんだろうか。
まぁこう見えてまだ六歳だしね。
抱きついてきたマリクを見る私は母親にでもなった気分。

「いい匂いがするじぇ」

「よしよし」

マリクの頭を撫でようと少し体をひねって手を伸ばす。

「痛っ」

しかし髪に触れた瞬間チクッとした痛みを感じ、思わず手を引っ込めた。

「ん〜?」

「なんか今日のマリクの髪、一段と固いんだけど。刺さる。あ、ちょっ顔上げないで、刺さる」

「しょうかぁ?」

「うん、痛い。なに、今日はスーパーハードムースでも使ったの?」

「しょんなもん使わなくてもオレの髪は立つんでねぇ」

「おかしい。じゃあ何で立つのその髪?」

「心意気だじぇ」

………もしかして私、バカにされてる?
いや、でも、髪に関してはバクラも遊戯もそうだしな…。
本当に皆心意気で髪が立ってるんだろうか。うーん、バクラは心意気というより気合いっぽいけど。

「つまり心意気の違いで髪の固さは変わるってことですかね」

「醤油のことだ」

はあ、そうですか。
あ、これはマリク特有の「そういうことだ」。最初は何のことかと思ったよ。相変わらずの滑舌の悪さだけど、最近普通に解読できるようになってきたのが怖いわ。

「ククク…痛いかぁ?江音子…」

「痛い痛い。ちょっとHA☆NA☆SE!」

誰かさんの台詞を借りてマリクを離そうと試みる。
なになに、私を痛がらせて楽しんでるわけ?もう、ホントにマリクはドS…

「HA☆NA☆SEって言ってるでしょ?」

「いひゃいいひゃい…江音子…もっと…」

と見せかけてドMなんだよね。
私を放そうとしないマリクの両頬を、結構強い力で引っぱった。
そしたらもっとって言うもんだから、さらに手の力を強める。

「ぐぅ…快感が走るじぇ」

「うん、それはよかった」

すると私を掴んでた手も離れたので、パッとマリクの頬から手を離す。

「じゃ、私教室戻りまーす」

このままここにいてもマリクの髪の餌食になるだろうし。
と思い、私はスッと立ち上がった。

「しゃあどうした!攻めてきなぁ!」

しかし、ドアに向かう私の後ろからマリクが高らかに宣言したため、私は足を止め、マリクを振り返る。

「十万ボルトォ!!」

とその時、屋上のドアが開かれ、そこからマリクに向かって電撃が勢いよく放たれた。

「うわあああ!のわああああああ!…げほほ〜ん」

まるでオベリスクのゴッドハンドクラッシャーを喰らった時のように吹き飛ばされたマリクは、そのまま地面に這いつくばる。

「うおおおお…」

「⊂二二( ^ω^)二⊃!」

そんなマリクの前に立ちはだかった人物はもちろん、⊂二二( ^ω^)二⊃大好きバクラ。
彼が発した電撃は強烈だったようで、マリクは胸を押さえてよろよろと立ち上がった。

「マリク貴様、江音子に何してやがんだ」

「気持ちいいお(^ω^)」

「屋上はオレ様と江音子の定番スポットなんだよ」

「枕、屋上へはオレもよく来るんでねぇ」

うん、確かに。まぁバクラとの方が多いと思うけど。

「じゃあ次から来れないようにしてやるぜ…!スピリット⊂二二( ^ω^)二⊃!!」

「ごわああああああ!まさにDEATH☆GAME!」

DEATH☆GAMEという名のSMプレイが始まった。

…よし、今のうちに教室帰ろう。
マリクはドM、バクラはドS。二人共楽しんでるみたいだから邪魔しちゃ悪いしね。

マリクの叫び声を最後に、私は屋上のドアを閉め、教室へと帰っていったのだった。



心意気
(ハッ…!江音子がいねぇ!)
(枕ぁ!きしゃまのしぇいだぁ!)






髪形が一番強烈だから、あの髪どうなってんのかなと思って…。
マリクから顔芸に変わった瞬間立つから、ワックスとかムースじゃないんだよね。
やはり心意気説が私の中では強いですw

バクラとサ○シはもはやイコールですね!
十万ボルトを自分で出すのはサト○でもできないがw
あ、この辺りはMAD【M.I.は人間なのか?最終鬼畜六歳児マリク】より。


(20091210)


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