「ねぇマリク、顔芸してみて?」

「こうかぁ?」

くわっ!
江音子が頼んできたらすぐ、オレは顔芸してやった。
目を少々見開き、顔の血管を浮き出させる。

「すごい。どうやったら血管浮き出させられるの?」

嬉しそうに、そして不思議そうにオレの顔をじっと見つめる江音子。
角度をかえてみたり、横に回ってみたりしながらオレの顔を観察している姿には、思わず笑いそうになる。

「しゃあ…どうやるのかねぇ。顔にちょっと力入れてみなぁ」

「力?………こう?」

ぐっ!と、江音子が顔に力を入れたのはわかった。
だが血管を浮き出せてはおらず、顔を強張らせただけのように見える。

「ど……どう…!?」

力んでいるためか、声もなんだか堅苦しい。

「クククッ!」

その必死の姿に思わずオレは笑ってしまった。
途端江音子が顔の緊張をとく。

「な、何っ?」

「全然出来てないねぇ」

「えー、出来てないのかぁ。難しいな、顔芸」

「出来なくてもいいんじゃねぇかぁ?」

「まぁ、日常生活に支障はきたさないけどさ、気になるんだもん、仕組みが。うーん、どうなってるんだろ」

言うと江音子はオレに近付き、右手でオレの左頬に触れた。
おぉいおぉい…これはまるで…

「なんか触ると不思議な感じ。ぼこぼこしてる」

まぁ、気になってるだけだろうが、江音子、ハタから見たら貴様がオレにキスでもしようって図だぜぇ?
気付いてるか?…江音子に限って気付いてるわけないだろうなぁ。
ククク…おもしれぇ。

「………」

江音子の顔が近い。オレがちょっと動けば触れそうなくらい。
このままオレがキスでもしたら、江音子はどんな反応をするかねぇ。
そんなことを考えながら、されるがままにしているオレ。
いい加減、キスしてやろうかぁ?

「わからんっ」

オレが江音子に触れようと右手を動かしたと同時に、江音子は眉間に皺を寄せてオレから離れた。
…遅かったか。残念だねぇ。

「でも、マリクは顔芸してても、格好良い時は格好良いね」

嬉しいこと言ってくれるねぇ。

「授業始まるし、行こっか」

「ああ」

江音子のこの言葉を聞いてから、オレは教室に戻っても顔芸を続けていた。
江音子が格好良いと思うなら、オレはずっとこのままでいるぜぇ?

結局この日一日は顔芸を続け、周りの奴らが怖いと言ったからか、江音子にやめるように言われてしぶしぶ顔を元に戻したオレだった。



顔芸
(テンション上がったらできるのかな?)
(しぇいじぇい頑張るんだなぁ)
(マリクの滑舌もね)






案外単純な顔芸(笑)
顔芸は他のキャラ達と違って余裕がありますね。


(20091126)


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