Sunny Day
天候は、まさに「ひでり」状態。
容赦なく日光が照りつける夏のある日、サザナミタウンの海の外れの方で、きゃっきゃうふふと楽しげな笑い声が響いていた。
「ハッピーっ。たーのーしい〜!」
「フタっチ。」
飛沫を上げて勢いよく水面から顔を出したメイは、隣で浮かぶフタチマルにニッコリと笑いかけた。
波打ち際で、デンリュウがポムポムとメイに向かって手を叩いている。
「リュウ〜。リュウ、デーーン。」
デンリュウの元までスイスイと泳いでやってきたメイに、デンリュウはおっとりとした鳴き方で賛美の言葉を贈る。
先程からメイが海に潜って出てくるたびにはしゃいでおり、どうやらメイが泳ぐ姿に感動を覚えているらしい。
メイの傍でメイと一緒に泳いでいたフタチマルも、
そのことには少々驚きを隠せない様子で彼女を見つめている。
そんな2匹に向かって、メイはニコニコと楽しい気持ちを満面に浮かべて言った。
「えへへ〜。わたし、泳ぐのは結構得意なのよー。」
「フタチ……。」
普段はドジで、何をしても転び、何もしなくても転ぶほど鈍臭いメイだが、水泳に関してはそうでもないというのが本人談だ。
みずタイプであるフタチマルとも難なく一緒に泳げる程度に、メイは水の中ではスムーズに過ごしている。
普段の彼女を知っていれば、幾度も足をつったり、ひたすらに溺れたり、浮き輪なしでは水の中に入ることすらできそうにないのに。
なんとも意外な一面を見てしまった、とフタチマルはいっそ世界の広さを知るような心境でメイがスイスイ泳ぐ姿を隣で眺めるのだった。
「ブイ!ブイ!ブイブイ!」
「ロア……っ。」
メイとフタチマルが海で泳いでいるのに対し、イーブイとゾロアのちっちゃいものコンビは砂浜でひたすら穴を掘っていた。
「あなをほる」の技を覚えているのもあって、白い砂浜を勢いよく掘り進めては砂山を高く積み上げていくイーブイ。
反対に、ゾロアは掘れども掘れどもイーブイの勢いには追いつけず、穴も浅い。
「ブーイっ。」
「…………。」
顔を掘った砂で真っ白に染めたイーブイが、フフンどうだーっと、ふさふさの襟巻を揺らして得意な顔をゾロアに向ける。
砂まみれになっているが、その下の紅茶の色をした頬が達成感と優越感でピンク色にうっすら染まっているのが何とも愛らしい。
が、ゾロアの目にはそうは映らなかった。
イーブイのドヤ顔に無言を返すゾロアの頬が小さく膨らんでいる。
どうやら勝負に負けてふてくされているようで、イーブイを見つめ返す視線にはじっとりとした気配が漂っていた。
「ブイっ。」
「……!ロァ……っ。」
そんなゾロアの様子を気にせず、イーブイはぶるぶると全身を震わせて砂を払い落とす。
すぐ隣にいたゾロアは、イーブイの落とした砂を思いきり被ってしまい、小さな悲鳴を上げて慌てて前足で顔をこしこしとこすった。
「ブイブイブイっ!」
そんなゾロアの様子はバッチリ見つけたイーブイが、ケラケラ笑い声を上げる。
「……ロア……。」
「ブーーイ!」
「!ゾロ……っ!」
恨めしそうにイーブイを横目で睨んだゾロアの半目に映るイーブイは、それはそれは楽しげで。
悔しかったら追いかけてみろーと、海に向かって走っていく彼を捕まえるべく、ゾロアも駆け出した。
「ブイブーイ!ブイ〜〜!」
「ローア……っ。」
波打ち際で鬼ごっこを始めたちっちゃいものコンビ。
その微笑ましい光景に「デーン」と「あらあらー」とデンリュウがおっとり微笑んだ。