雪化粧
「ゾロッ、ゾロゾロアーク。」
「……?どうしたの、シフォン。」
夕食後、ママの作った普通よりも2回り以上大きな特製カスタードプリンをデザートに食べているとシフォンが向かいのイスに腰掛けて私を呼ぶ。
最初はプリンがほしいのかと思ったけれど、シフォンが物言いたげにテレビを一瞥したのを見て、私もテレビに視線を移す。
小さな子供たちとバニプッチや進化形のバニリッチ、クマシュンにツンベアーなどのイッシュのこおりタイプのポケモンが、雪遊びをしている。
バニプッチと女の子がスノーボードで思いきり雪で作られた台を滑り降りていた。
画面が切り替わり、今度は男の子たちがクマシュンやツンベアーたちと雪合戦をしている。
「ゾロ!」
そこでシフォンが声を上げた。
「……?シフォン、ひょっとしてこの遊びをしたいの?」
「ゾロ。」
そうだ、とぶっきらぼうな口調で頷く。
素直じゃないのね。
でも、今カノコタウンには雪が降っているのだ。
この調子ならきっと明日にはそれなりに積もっているだろう。
私はシフォンに向き直ってプリンを一口、口に入れるとOKの意味でこくりと頷いた。
「2チームに分かれてやりましょう。」
先に相手のチームを全員倒した方が勝ちよ。
ミルフィーユ、ムース、ワッフル、私のチームと、
シフォン、フラン、トルテ、シャルロットのチームに分けて言えば、
「コジョ!」
「ゾロアー!」
シフォンとムースが睨み合い、火花を散らした。
和やかに遊ぶには程遠い雰囲気がこのふたりらしくて微笑ましいと、私はミルフィーユと頷きあった。
――――というわけで、あらかじめある程度の雪玉を作ってバトルを開始すれば、途端に雪玉が飛び交った。
「コォジョォォ!」
「キシシッ!ゾロォッ!」
「ウォーー!」
雪玉にまぎれて放たれる、はどうだん。
シフォンの指示の元、飛び上がりエアスラッシュを放ち雪玉を壊すフラン。
「ローダッ!」
「ウォオ!」
そのスキを狙ってつるのムチで新しく雪玉を作ったミルフィーユがフランに雪玉を投げるも、かわされてしまった。
逆にシフォンがミルフィーユへ雪玉を放るもムースの投げた雪玉に相殺される。
「……さすがね。」
コンビネーションの良さに小首を傾げて、人間がやるものよりもよっぽど白熱している様子に苦笑した。
すると前から「ヒヤ〜〜っ。」というシャルロットの気合いの入った掛け声を耳にして顔を向ければ、雪玉を思いきり投げている姿があった。
やる気が伝わってくる声と姿勢だけれど、残念ながら投げ込む雪玉はふわふわ宙を漂うようにして、彼から50センチほど開いた距離でぽてりと落ちた。
まったくこちら側に届いていない。
それでもシャルロットは一生懸命雪玉を投げている。
……これは、あえて狙ってもいいのかしら。
「…………。……えいっ。」
開始からまだ1度も投げないで持っていた雪玉をシャルロットに放り投げた。
けれど。
「コンっ!」
「ヒヤ?ヒヤ〜〜プっ。」
横から飛び出したトルテがシャルロットの尻尾をくわえて、かわしてみせたのだった。