うちのコ一番
「手持ちの中で恋が芽生えるなんて、なんだかいいねえ。ねえねえ、トウヤは?」

「オレのところは特に変わったことはないよ。
でも恥ずかしがり屋なバッフロンをやさしく引っ張ってやるタブンネは見ていて和むぜ。
ついつい引っ張りすぎて木に激突させることもあるけどな。」

「それは引っ張るの意味が違っていないか。」


バッフロンをやさしく引っ張って木に激突させるタブンネとは一体……。

チェレンが半目になってトウヤの爽やかな笑顔に詳細を求めるも、
特に気にしていないらしいマイペースなベルが「ねえねえ!」と話題をすぐに変えてしまったことで結局答えが返ってくることはなかった。


「みんないろんなポケモンをゲットしたよねえ!見せ合いっこしようよ!」

「……ねえ、まさかベル、ここでそれをやろうとしているわけじゃないわよね?」

「せーの!で一斉にボールを投げて出そうね!いっくよお!」

「ねえ、ベル。あの……。」


トウカが制止をかけようとするも、立ち上がったベルはすでに5つのモンスターボールを腕に抱えており、
天真爛漫を絵に描いたような様子で肩を弾ませている。

力添えをしてくれないかと男子2人を伺えば、彼らも彼らでモンスターボールを構えてやる気の様子だ。

これが彼らの部屋ならばトウカと同じようにベルを止めに入っただろう。

しかし、ここは彼らの部屋ではなくトウカの部屋で、しかも想い人のベルの提案とあれば……そんな意気込みで彼らは笑みさえ浮かべて立ち上がる。


トウカは静かに両手で顔を覆った。


「おうい!トウカ、はやくはやく!」

「……わかったわ、ベル。」


何をしているのと言わんばかりの純真そのもののエメラルドに促され、結局トウカもボールを抱えて立ち上がった。

結局全員、ベルに甘いのである。


「せーの!」


ベルの掛け声に合わせて、みんなでボールを放り投げる。

一斉に口を開いたボールから白い光があふれ出し、大量のそれがそれぞれ形を織成した。


「みんな出てきたねえ。」

「でも、か、かなり狭いぜ……。」

「当然だと思うの、トウヤくん。」


旅をする中で経験を積めば、ポケモンは進化する。
すでにバッジを8つ集め終えているトウカたちのポケモンたちはほとんどが最終進化形だ。
そして、大抵のポケモンは進化をすればその分 体も大きくなる。

特に重量級の大柄なエンブオーやギガイアス、オノノクスは中々の破壊力である。

一気に密集地帯となった自分の部屋にトウカは近くにいるトウヤのランクルスのゼリー状の身体に頬をくっつけた。
ひんやりとしたぷにぷにの感触が心地良い。
能天気な性格らしいランクルスは、のんびりとした表情を湛えて反対側からも身体を引っ付けてくるビクティニも受け入れていた。


「ほら、見て見て!あたしの新しいお友達のシャンデラのデラちゃんと、コジョンドのコジョちゃんでーす!」

「デラッシャァン!」

「ジョンド!」


やはり若干狭苦しい密集地帯も持ち前のマイペースでさして気にも留めず、ベルが自分の両サイドに控える色違いのポケモン2匹を前に出す。

オレンジ色の炎を灯したデラちゃんことシャンデラが、くるくると回って自分の特別な色を見せるように悠悠自適な態度で踊り、
コジョンドのコジョちゃんはデラちゃんよりも控えめであるものの、ベルに見初められて嬉しいらしくニッコリ笑っている。

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