いつもの非日常
食堂で席を探していたタカ丸は、馴染みの人の馴染みない姿を見つけてぎょっとした。
いつも自信に満ちあふれ、顔を突き合わせれば喧嘩ばかりする滝夜叉丸と三木ヱ門が隣り合って座り、机に突っ伏していた。鬱陶しいほどの輝きも、今は見る影もない。

「二人とも、どうしたの!?」

「ああ、タカ丸さん。気にしないでください」

「少し疲れてるだけですから」

「少しってレベルじゃないよ!?」

よく回る口は鳴りを潜め、常ならば張りのある声も弱々しい。
もたげた顔はげっそりとしていて、死にかけの人間の顔に似ているとタカ丸は思った。

「喜八郎くん、なにがあったの?」

タカ丸は二人の向かいに座り、隣で飄々と味噌汁を啜っていた喜八郎に尋ねた。
喜八郎はゆっくりと味噌汁を嚥下し、タカ丸を見ずに口を開いた。

「委員会が大変みたいですよ」

「委員会って、そんなに激務だっけ?」

それを聞いた瞬間、滝夜叉丸と三木ヱ門がくわっと目を見開いた。

「それはタカ丸さんが『そんなことでいいんかい』と言われている豆腐委員会、もとい火薬委員会だからです!」

「四徹したあげく鍛練と称して池で寝たことがありますか!?ないでしょう!?」

「そんなサラリーマンの残業自慢みたいなこと言われても……」

タカ丸は視線で喜八郎に助けを求めた。だが、喜八郎はどこ吹く風で、焼き魚をほぐす。

戸惑っている間に、滝夜叉丸と三木エ門の二人はどちらの委員会がより大変かで争い始めた。止めようにも、口出しすれば先ほどのように矛先が自分に向いてしまう。かといって、誰かに助けを求めてもこの場にいる上級生は喜八郎だけで、下級生たちは巻き込まれないよう身を縮めている。
どうしようもないことを悟ったタカ丸は、二人の口論を意識の隅に追いやり、いただきますと手を合わせた。
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