膝枕
同じ部屋でそれぞれ本を読んでいると、紡がうつらうつらしはじめた。すぐにはっとして本に視線を落とすが、瞬く間にまた舟を漕ぎ出してしまう。
その様子がおかしくて、ちさきは思わず笑ってしまった。

「少し寝たら? その方がすっきりするでしょ?」

「……そうだな」

眠そうに頷き、紡は当然のようにちさきの膝を枕にして寝転がった。
その頭をちさきは寝かしつけるように撫でた。

「十五分くらいしたら起こすね」

返事の代わりに心地よさそうな寝息が聞こえてくる。膝も畳もそこまで寝心地よくはないだろうに、寝つきのよいことだ。

甘えられている。
以前は家事や勇のことで頼られることはあっても、甘えられることはなかったように思う。実は抜けていても、意外と子供っぽいところがあっても、多分、無意識かもしれないが、そこの線引きはしっかりしていたのだろう。
けれど、想いを確かめ合ってからは、こんなふうに少しずつ甘えてくれるようになった。それが、なんだか嬉しい。

読書を再開して、起こさないよう優しく紡の髪に触れる。ふわふわとまではいかないが、短い髪は見た目よりも柔らかかった。

切りのいいところで顔を上げて時計を確認すると、もう十五分以上経っていた。
頭を撫でていた手で肩を揺らし、「紡、起きて」と声をかける。
と、眠たげに目蓋が持ち上げられた。

「おはよう」

「……んっ」

しかし、紡は起き上がらずにちさきの下腹に顔を埋めてきた。

「もう、ちゃんと起きて」

「もう少しだけ」

「起きてるじゃない。……あっ、こら! 寝たふりしてもだめだからね」



結構前に初膝枕を書いたので、慣れた頃も書いてみたくなりました。
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