赤との邂逅
随分と朝早くに目が覚めた気がする。
眠い目を擦りながら時計を見ると、まだ五時だった。
朝食まであと一時間半もある。

どうしようか?

二度寝するにしても微妙な時間だし、あんまりにも寒いから目が覚めてしまった。

散歩でもして時間を潰そうか?

うん、そうしよう。

私はパジャマから着替えて、顔を洗いに一階へ下りた。


******


外に出ると、今年初めての雪が降っていた。
どうりで寒いはずだ。コートを着てきてよかった。

とくに行くあてもなかった私は、シンジ湖に来ていた。
よくアツシと一緒に遊び場にしているから、自分の庭みたいなものだ。
いつものように奥の方まで歩いていくと、先客がいた。
こんな時間に人がいるなんて、いや、こんなところに人がいるなんて珍しい。
今まで何度もこの湖を訪れたけど、私とアツシ以外の人を見かけたことはあまりなかった。だからこそ、私達はここを遊び場に選んだのだから。

少し気になったから観察してみる。
赤い帽子に赤い上着。下はジーンズとスニーカー。背中には黄色いリュック。腰にはモンスターボール。私より少し年上の少年だ。
旅の途中のトレーナーみたいだ。
彼は私に気付いてないのか、さっきからずっと湖の方ばかり見ている。
どうして湖ばかり見ているのだろう?
何もなかったと思うけど。

ああ、でも、小さい頃にこの湖の伝説を聞いたような……。
内容自体はあまり思い出せないけど、伝説のポケモンがどうとか言ってた気はする。
もしかしたら、彼はその伝説を知ってるのかもしれない。
単純に私と同じく暇潰しなのかもしれないけど。
直接訊けばいい話だけど、そこまでするのは面倒くさい。
もう帰ろうかなと思ったとき、突然目の前が真っ白になった。
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