木の実の仲
この状況はどうしたものか。

朝食にと注文したパンケーキを頬張り、オレは眉を寄せた。
このモモンの実のコンポートが添えられたパンケーキはうまいが、朝食にするには甘すぎた。
それだけでも渋面をつくるには充分なのに、それ以上にオレを悩ませることが目の前で繰り広げられていた。

ボックス席の向かいに、ツタージャのタージャとヨーテリーのリクがテーブルの上に座っている。2匹の前には木の実の盛り合わせが1皿あった。
リクがそっと前足を上げ、木の実に向かって伸ばそうとした。同時にタージャも蔓を伸ばす。それに気付いたリクはびくっとなって、遠慮がちに前足を引っ込めた。
タージャはちらとリクに視線をやったが、特になにをするわけでもなく、赤いクラボの実を手に取った。

今朝から急によそよそしくなったわけではない。
この2匹は出会った時からこんな感じだ。

1番の原因はリクが人見知り、いや、この場合はポケ見知りをするからだ。
そのうえ、ツタージャという種族がそうなのか、タージャが特別目つきが悪いのかは知らないが、普通にしていても睨んでいるように見えるため、ただでさえ臆病なリクがさらにびびってしまった。
タージャはタージャで下手に怖がらせるのを避けているのか、リクに近づこうとしない。
おかげで、リクは一向にタージャに慣れないようだった。

オレは深くため息を吐いた。
一緒に旅をするんだから、仲良くなった方が楽しいだろうに。
なんとか、2匹を歩み寄らせることができないものか。
オレがリクと友達になるのにも、時間がかかったからな。やっぱり、ゆっくり時間をかけて慣れていくしかないんだろうか。

食事の手をとめて考え込んでいたら、突然、頭に衝撃がきた。
こんなことするやつは、あいつしかいない。

「おい、タージャ。いきなりなにすんだ」

「ジャ」

タージャはオレを叩いた蔓で空いた皿を指した。

「ああ、食い終わったのか」

2匹分にしては結構な量があったのに。
こいつらがはやく食い終わったのか、オレが思った以上に考え込んでいたのか。
どっちにしろ、オレもはやく食わねえと。もたもたしてると、またタージャに叩かれる。こいつは待たされるのが嫌いだ。

「リク、まだ食えそうなら、少し食ってくれないか?甘いの好きだろ?」

「きゃん!」

リクは目を輝かせて、尻尾を振った。
わかりやすいやつ。

食べかけのパンケーキを半分にわけ、1つはリクの前にある皿にのせる。

「ほら、これも」

薄ピンクのシロップを滴らせるモモンの実のコンポートをその上にのせてやると、瞳の輝きがさらに増した。
ほんとに甘いものが好きだよな。

そういや、タージャは何が好きなんだろう。
出会ってまだ数日だから、そういうことは全然知らねえんだよな。

「タージャも食うか?」

タージャは無言で首を振った。
甘いものが苦手なのか、単に腹がいっぱいなだけかはわからないが、リクみたいに甘いものには目がないというわけではないようだ。

幸せそうにパンケーキを頬張るリクを横目に、オレも少々甘すぎるそれを口の中にかきこみ、コーヒーで流し込んだ。
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