ツンと湿布の薬品特有の匂いが目に染みる。

「…あー……」

また失敗した。はぁ、と小さく息を吐いた。

ここまで不器用だとは思わなかった。
怪我の手当てでこんなに時間がかかるとは。

もういいやと救急箱を仕舞おうとした時、待ってと小さな声が聞こえた。


「それ、ちゃんと手当てしないと駄目。」

「え、あ、」


振り返るとマネージャーの清水さんがいた。


「貸して、手当てするから。」

「お、お願いします……」


マネージャーの清水さんと話したことはあまりなかった。

なんていうか、近くで見ると可愛いというよりは美人という方が似合う顔立ちで思わずドキッとした。



「他に痛いところあったら言って。」

「あ、ないっス。あの、ありがとうございました!」

気付けば腕には綺麗に手当てがされていた。
この人、器用だなぁ。マネージャーって感じがする。


「気にしないで、これもマネージャーの仕事だから。」


テキパキと片付けをする清水さんに思わず言ってしまった。


「あの、また怪我したら手当てしてください!」

あれ、今、おかしなこと言った気がする、

あ、やばい。
そう想ったと同時にくすくすと小さな声が聞こえた。


「あ、その、」

「選手のサポートがマネージャーの仕事。怪我の手当てなんてあたりまえ。」


くすくすと微笑んだ清水さんはいつもより綺麗に見えた。


「練習頑張って。でも、無茶はしないでね。」

「う、うス!」


元気に返事をするとまた清水さんはくす、と小さく微笑んだ。



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