パティシエ及川×大学生影山





「はい、トビオちゃん。」

コト、と小さく音を鳴らし目の前にケーキがのった皿が置かれた。
またかと思いつつも甘い匂いに誘われテーブルにすわる。
及川さんは、パティシエとしてよく俺に西洋菓子をくれる。
及川さんの作る洋菓子はとても美味しくてキレイだ。
この前は、紅玉リンゴをたっぷりと使ったタルトだった。リンゴのほんのりとした甘さと生地の組み合わせが最高だった。

なんというか、バレーにしか使うことのなかった手が菓子作りに使われるのは、何だか不思議だった。


「トビオちゃん、食べないの?今日はザッハトルテって言ってねー、チョコレートの甘さと酸味のあるジャムの組み合わせが上手くいったんだ。ホラ、食べなよ」

あーんなんて恥ずかしいことをしてくる及川さんに俺は小さく口を開けた。


「ッ、美味しいです!」


ぱくりと一口食べれば、口の中いっぱいに広がる甘さ。カカオのほろ苦さとジャムの甘酸っぱさも相性が良かった。
もしかしたら、今までで一番かもしれない


「どうやったらこんなに美味く作れるんですか、」

「えーなんでだろー……トビオちゃんが美味しいって笑ってくれる顔が見たいからかもね、」


あははと笑う及川さんは、甘いチョコの匂いがした。


「ところでさ、俺食べてないんだよね!」

「へ、」

「トビオちゃんだけずるいからさ!だから、トビオちゃんいいよね、」



甘い匂いを漂わせている及川さんは俺を抱きしめた。

チョコの甘い匂い移っちゃうなぁ、なんて事をどこかで思い、どちらともなくキスをした。



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