short | ナノ


▽ いつもこんな感じ

昼休みの屋上。
俺はいつも通り秋と二人で昼ご飯を食べていた。

『バレンタインって別にいらないと思うんだ。』

そう言った彼女の顔は無表情だった。
いや、まぁいつも無表情なんだけどね…。
いつもと変わらない声でいつもと変わらない顔でなんてことを言うんだろうか、この子は。

「それじゃあ、俺がチョコをもらえないじゃないか」
『臨也君はいつからチョコ好きになったのさ』
「違うよ、秋からのチョコがもらえないって言っているんだよ」
『…欲しいの?』

疑うような目で見てきた秋に微笑みながら「うん」と言った。
あ、もしかして

「嫉妬した?」
『…っ』

顔が真っ赤になった秋に俺は純粋に可愛いと思った。
たった一人の女の子に恋をするなんて、中学時代の俺には想像もできなかっただろうな…。

高校生になり、いつも通り過ごしていた時。
たまたま、そう偶然秋を見たんだ。
その時は何も無かった。一目ぼれって訳でもない。でも、興味が出た。
だって、秋ってずっと無表情なんだよ?
友人がどれだけ君を笑わせようとしても君は笑わなかった。
でも君は、秋はシズちゃんのせいでできた傷を見て、笑った。

あのずっと無表情だった秋が笑った。

その笑った顔をみて、俺は落ちたんだ。
それから君の事を調べて君に近付いたんだ。
唯一わからなかったことがある。君が何故、傷を見て笑ったのか。
そしたら、また意外な答えが返ってきた。

「あまりにも歪んだ顔が綺麗だったから、だったっけ」
『うわ、覚えてるんだ』
「覚えてるよ、秋との会話なら全部」
『こわっ』
「秋は忘れたの?」
『いや、出会いなら覚えてるけど』

そう言ってサンドイッチを頬張る秋も可愛いなと思いつつ、話を戻した。

「今度のバレンタインはクッキーがいいな」
『…、いつもクッキーじゃん』
「そうだったね」

俺は笑いながら、彼女は無表情で。
これが俺達の日常。



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