誰かが見てる。
そう感じたのは、今日中に終わらせなければいけなかった提出物が終わった頃だった。
視線を感じたドアの方を見てみると、見知らぬ男子が立っていた。
「…っ!」
視線に気付いたのか、その男子はパッと視線を逸らしてからまたこっちを見た。
そして、近付いてきた。
教室には私しかいない。正確に言えば私とそのドアの近くに立っていた男子しかいなかった。
『……?』
私に用があったのか、そう思ったがその男子が持っていたタオルを見てすぐわかった。
あぁ、忘れ物か…いや、でもそれにしてはおかしくない?
何故、このクラスに…この教室に入ってきた?
この男子、謎だらけだ。
「君、名前は?」
いきなり、声をかけられたと思ったらこれか?名前?そんなの聞いてどうするのさ。
本当に謎だらけだ。
『一之瀬、和真』
「……そうか」
その男子はそれだけ言って立ち去ろうとした。
『待って』
「…なんだ?」
『自分の名前も名乗ってよ』
なんかイライラするんだけど、コイツなんで自分の名前も名乗らないの?
ふざけてるの?
「・・・、赤司征十郎だ」
『赤司…ね』
不思議な人。
それが私の中での彼の第一印象だった。
初めて聞く声
(あのさ、赤司くん)
(なんだ?)
(急いで行かなくて良いの?)
(え?)
(時間だよ、ここにいて何分経ってると思ってるの?)
(あっ…)
(早く行きなよ)
(あぁ、悪い)