あいつじゃなくて


私はお昼休みに、屋上で一人、お弁当を食べながら


――――――先輩を見つめていた。




『あー、今日も折原先輩はかっこいいねー』


私、不知火秋兎は、恋する高校一年生です!

出会いは奇跡に近く、

この春、来神高校へ入学し、見事に入学式の日に迷い、

挙句の果てに、

雨が降ってくるという最悪の高校生活一日目を迎えた私ですが、

その時にばったり出くわし、

そして、私を救ってくれた折原先輩に恋をしてしまったのです!


「あいつの何処がいいんだ…」

『眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能!あの人に悪い所なんて無いよ!』

「そうかよ」


ぶっきらぼうに答える私の幼馴染、静雄。

歳は私より一つ上だけど、私は気にせず名前で呼んでいる。


『そんな冷たくしなくてもー』

「お前はあいつだけ見てればいいだろ…俺なんか気にせず」

『もー、そんな拗ねないでよー』

「なっ、拗ねてねぇ!」

『そう?』

「…それより、見なくていいのかよ」


ん、と静雄が顎でさす方向を見て、気付いた。


『あー!忘れてた!』


一瞬でも、先輩の存在を忘れてた…!

秋兎、一生の不覚!


『ふぁー、先輩ー…かっこいいー』

「秋兎」

『んー?』

「変な顔になってんぞ」

『は?!ちょっ、それ早く言ってよ!』

「…やっぱり」


静雄は私の腕をひっぱり、私を自分の膝の上に座らせた。

ちょっ、え?


「あいつじゃなくて、俺を見ろよ」


あいつじゃなくて


(いつか必ず俺を見るようにしてやる。)
(不意にもドキッとしてしまった。)


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