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「斑ー?どーこでーすかー?」

私はとある神社の巫女だ。
"力"はあるほう。おじいちゃん譲りなのだそうだ。
私の家、一ノ瀬神社は、先祖代々アヤカシと仲良くしていた神社だ。
その所為か参拝者は珍しいものの、『そっち』関係の仕事がよく舞い込んでくる。

そして今は、斑を探している。
人から離れた私の、大切な仲間。
悩みとかを打ち明けられる、いぢわるだけど根はいいやつだ。


「まーだーらー!」

「うるさいぞ小娘」

ひと風吹いたと思ったら目の前にはふさふさの獣の毛。
いつ見ても気持ちよさそうだ。

「斑!今日はね、人間の友達ができたんだよ!!!
久々に学校行ったら、私と同じ"見える"人がいたみたいなの!!」

「ほう。うまそうか?そいつ」

「・・・・なんでそっちに行くかな。」

そういうと斑は少しすねたようにそっぽを向く。
不覚にも自分より大きいヤツを、可愛いと思ってしまった。

「お前には冗談と言うものが通じないのか、私はお前しか喰らわん。」

「ふふ、じゃ・・・私が死んだらね?」

そんな日常会話をしながら木陰に入ると、斑は人の姿になり私のひざに頭をおいてねっころがる。
光の反射でやわらかく光る白銀の髪を、優しく撫でる。
すると斑は気持ちよさそうに目を細め、喉を鳴らす。天下の斑が、まるで猫だ。

「夏目レイコって名前でね、とっても可愛くて強いの!
そこら辺の妖怪の噂だと『友人帳』っていうのを作ってるみたいなの。」

「友人帳の夏目・・・か。確か、強い妖と怠慢はって勝ったら魂名を奪うらしいな。
つまりその夏目が死んだ後、友人帳とやらを奪えば天下が取れるわけか・・・・・・って!!」

斑のおでこが赤くなっている。私がやった。
斑はおでこを抑えながら起き上がると、八重歯をむき出して恨めしそうにこっちを見る。犬だ。

「そういうことは言わないの!少なくとも、私の前では許しません。」

「小娘・・・・いつか絶対食ってやる。」

「やれるもんなら、ね!
斑に殺されるほど落ちてないわよーだ。」

昔、斑と始めてあった日も食われそうになった。
おいしそうな獲物を見つけた目の斑は怖い。
(そのときは自分の中の力が働いて殴って倒したが。)
それからと言うもの私に負けたのが悔しいのか、隙を狙って喰おうとしてきた。
今は丸くなった方だろう。私も斑も、お互い信頼関係を気づいてきた。
そして私は斑へ抱いてはいけない感情を、ずっとしまい続けていた。

・・・・、こんな日がずっと続けばいい。



―――・・ ・・・…


レイコとは、とても仲良くなった。
同年代というのもあるのだろうが、同じ待遇にいるレイコの気持ちは自分にも共通するものがあったからなのかもしれない。

「沙羅!」

「あ、レイコ!かえろう?」

「ええ、今日は寄りたい場所があるのだけれど、大丈夫?」

いまや私はレイコの友人帳の、傍聴人と言う立場に位置していた。
レイコと同じ大きさの力と技術があるのだから足手まといにならないと、
友人が危険にさらされないように自分から申し出たことだ。



今日の相手は大勢だった。私も合わせて7,8匹挑戦者に挟まれ、さすがに少し苦戦していた時。

「―! レイコ危ない!!!」

「沙羅ッ!!!」

からだが勝手に動く、とは、こんな感覚だろうか。
視界が白く霞む。そのときは唯、ああ私死ぬのかって思った。
最後に・・・・最後に1度だけ・・・・斑の顔が見たかった。
見て、伝えたかった。

―――愛しています。



視界が暗転。












沙羅が死んだ。
レイコをかばって死んだのだと言う。
言いたいことは理解ができた。だが、体が追いつかない。
振り向いたらまだその笑顔が迎えてくれるような気がした。
抱き起こして握った手は、冷たかった。


次にあったら今度こそ伝えようと思っていた。


――――あのね、斑。


たとえ人間と言う、瞬きをしている間にいなくなってしまうような命のヤツでも。


――――私ね、今度又生まれ変わったら


自分が10年間で沙羅抱いたこの気持ちは本当だ、きっと。


――――また、人間になりたいな。


いつかお前が言わなかった言葉、自分がいえなかった言葉。


――――それでね、また、斑と、一緒にいたいんだ。


次会えたら、必ず伝えると約束しよう。


――――そのときは言うね。





『愛してる』






そしてレイコは、さらに人間との距離を離してしまうという結果となってしまった。
さらに斑は、怒り狂いその妖怪一族を滅ぼす勢いで敵を喰いちぎった。

その後レイコとの勝負に負け、名のある陰陽師に封印されることとなった。



















「にゃんこ先生!
隣のクラスの転入生で、はっきり『見える』人見つけたんだ!!!」

「夏目、そやつをつれて来い。品定めしてやる。」

「あ、まって!」

そういうと私は塀から飛び降り、学校への道を歩む。
懐かしいにおいがした気がした。



学校へと近づくと、予想が確信へと変わる。
すぐさま久々の"以前"の格好へと姿を変え、走り出す。



目の前には顔こそ違うが、あのときの彼女そのままで。
そして二人は出会う。


物語の続きは――――・・・・。



私と。