『ま、真人君!!』
「………。」
『真人君!!真人君!!』
「……zzz」
体を揺すっても、起きる気配のない彼。
それどころか、揺すったことでさらに状況が悪化している気がする。
小声で話すのにも限界がある、みんなが気づく前に私が止めなきゃ!!
『真人君起きて!!このままじゃ!!!!』
彼の両手は徐々に上に上がり、操られたように手首だけが下を向いていた。
その足は椅子の上で、右足で立ち、左足だけを腿の高さまで持ち上げ、折り曲げられている。
ああ、完成してしまった!
「真人君、それは十字架じゃなくて…
――荒ぶる鷹のポーズだよ!!」
今は、世界史の時間である。
*
板書を熱心に写している生徒と教科書にしか目を向けていない先生のおかげで生憎、真人君の左隣の理樹君しか今の事実を知らない。
彼は苦笑いをしながら真人君を見ていた。
私の叫び声が教室中に響いた瞬間、真人君は何事もないように自分の席に座り直していた。
とてもいい姿勢で授業を受けている。なんで!!?
「ゴホン…一ノ瀬君、寝不足なのかね?」
「え、あ…ご、ごめんなさい!!」
その言葉にクラス中から朗らかな笑い声がこみ上げるが、これが日常のように皆板書を再開した。
恥ずかしくてうつむいていると、ふと左からポン、と肩を叩かれた。
勿論のこと私の左隣は、真人君であって…。
『安心しろ、俺も寝てたぜ!』
「〜〜〜!!!」
その綺麗なまでに清々しい顔で、あたかも元気出せ、というかのようにグッドラックをもらう。
誰のせいだと思っているんだ!と口に出そうとして寸前のところでこらえると、彼はまた背筋を伸ばして腕を組み直し、綺麗な姿勢のまま眠りについた。
勿論開いたノートは白紙。
後でルームメイト兼幼馴染の直枝君に見せて貰う気満々である。
私は疲れたように机に伏せる。真人君は既に眠りに落ちていた。
「――えー、ここでイエス・キリストは復活を果たしたと言われますがー…」
けど、困ったことに耳だけはちゃんと授業に出ているのである。
彼の組まれた腕は胸元で交差して、その首は左上を向いている。
『真人君、それは…フランシスコ・ザビエルだよ…。』
今日も私の苦難は続くのである。
となりの真人君
(なんであそこまで起きないんだろう…。)(一ノ瀬なかなか面白いやつだぜ)
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こんな女の子のお話が書きたかったです。
真人好きすぎる。