halloween! | ナノ







菓子をくりゃれ?


※主はアヤカシ設定です。








「にゃんこ先生。
ちょっと、出てくる。」




午後10時。


2人に心配させないように、自室の2階の窓を開けてこっそりと家を出る。
ロープを伝って下へ降り、ゆっくりと森へと歩みを進めるべく地面を踏む。


サァ・・・


肌寒い、けれどやさしい森の風に煽られながら、”いつもの場所”へ。

学校と家の間にある、小さな道しるべ。
目的地について少しすると、秋の風を逆らうようにして吹く風。
その風とともに現れたのは待ち人。

だけど、着ていたのはいつもの着物ではなく、黒い、(裏地はオレンジの)マントととんがり帽子。
腿まで露出した黒いワンピースに、右手には肩まで届く大きな箒。

どう見てもこれは・・・


「やぁ夏目。今宵も良い風じゃのぅ?」


「アリサ、こんばんわ。
・・・・・どうしたのその格好」


”彼女”の名は「アリサ」。
僕がここに転校したてのとき、妖怪に絡まれたとき助けてくれた、妖怪。
昔はにゃんこ先生とドンパチやってたほど強いやつなんだとか。
(いまでも会えばじゃれあいと言う名目でやってるけど)


「ふむ、今日は“はろうぃん”という行事があるらしくてのぅ。
菓子をかっぱらって、くれない輩は喰っていいというなんとも愉快な行事じゃ!」


「(色々と間違ってる!)
それで・・・魔女の格好か。」


「ほう、これは”まじょ”というのか。
牛みたいなヤツらがぞろぞろやってきて、
菓子を貰う為にははこれを着ないといけないとゆうてきてのぉ。」


あいつらGOODJOB!


「へ、へぇ。
よく似合ってるよ。いつもの着物も悪くないけど。」


「お主を呼び出したのもこのためじゃ♪

さぁ、菓子をくりゃれ?」

トリックオアトリートだし。
僕はズボンの中にある饅頭をとりだし、渡す。


「はい。」


「む。なんじゃ・・・つまらん、もっておったか。
今宵こそは主を喰らえるかとおもうとったのに。」


「っ、やっぱりそっちがメインだったのか!
・・・そうかんたんには喰わせないよ。
にゃんこ先生との約束もあるしね。」


「ふぅ・・・つまらん男じゃ。

じゃがしかし、菓子をくれたことには変わりありんせん。」


そういうと、右手に持った箒を跨ぐと、こちらに眼だけを向けて


「わらわと、夜の散歩へ行きなんし?」


・・・・・・・・・・・・。
箒に乗って、どう散歩をするのだろうか。
脳裏に、とても身震いのする発想が過る。


「アリサさん?まさかとは思うけど、空飛んだりはしない・・・・」

「あたりまえ、何のためにわらわが箒に妖力を使ったと思っておるのじゃ」


「さいですか。」


覚悟を決め、箒にまたがる。
うわぁ、これ、周りに人がいたら確実に怪しいふたりだ。


「しっかりつかまらんと、落ちるかもしれない、のぅ!」

「うおぁッ!!」


語尾が強くなったと同時に、タン、と地を蹴る。
ゆっくりと浮びあがるとおもったのに、いきなり真上へと飛翔。
思わず眼の前のアリサに思い切りつかまる。


「ふふ、どうした夏目。今日は大胆じゃのう?」


「う、うるさい!ていうか落ちるー!」


そういっている間も高度を上げて上へ行く箒。
空気が少し少なく、気温が下がってきた。


「あーもういちいち耳元で騒ぐ出ない!
ほれ、眼を開けんしゃい。」


「・・・・う、わ・・・。」


そこに広がっていたのは、一面に広がる、僕の過ごしてきた景色。
夜でも月明かりが照らしてよく見える。


「すごいじゃろう?
お主を連れてきてよかった。」


「ありがとう、絶景だよ。・・・・・落ちそうだけど」


「そうかそうか、じゃ、いくぞえ?」


「え・・・・うわああああああああああああああッ!!!!」


早い早い早い落ちる落ちる落ちる寒い!!
あまりの速さに少しでも体制を崩したら本気で落ちそうだ。
風の音が鼓膜を通してびゅうびゅうときこえる。


「わはははは、たのしいのう!」





「おろせえええええ!!!!!」







静かな夜の山に、一つの悲鳴がこだまする。





「なぁ夏目?」


「な、なんですかっ!」



「来年もこうして祝えるといいのう。
――――春節」


「民族違う!?」