FF零式 | ナノ

魔導院の植物がいっせいに芽吹くとき、私たちはいくつのも過酷な訓練を乗り越え、候補生となった。
初めて候補生として新しい制服に腕を通したときの感動は、きっと一生忘れがたいものだとおもう。

訓練生の時からつるみ始めたカヅサ、エミナ、クラサメ共々同時に候補生へとあがり、その日の夜は飲み明かそうと言うことになった。
まだ未成年で酒は良くないと注意をしたクラサメも、やはり皆が心配なようでついてきた。


「ぃよーしカヅサーー!
今日は飲むぞーーーー!!」

「シノってこういうとき別人かと思うほどテンション高いよねぇ」

「いいじゃないかいいじゃないか!
今夜は無礼講だぜ、FOOOOOOOOOOO!!」

「シノ、シノ、キャラ壊れてるヨ。」

これから私たちは訓練生と候補生の宿舎間にある(実は酒も置いてある)バーのママ(オカm・・・ゴホゲホグホッ)のところへ向かう途中だ。
カヅサの首に腕を回し(私の身長の問題で軽く絞まってる)、後ろでエミナが心配していて、クラサメが一歩後ろを歩いている状態。

「シノ、未成年に酒はまだ早いと・・・。」

「いいのいいのー!
今日は無礼講なんだから!ママも『今日はと・く・べ・つ』って行ってたし!!
つれないヤツだねークラサメくーん?」

「・・・・・・・・・。」

「わぁー、殺気こわぁーい☆」

今日はクラサメのさっきも聞かないのさ!
うふふ!

「い゛、い゛だだだだだ!
シノ、首絞まってる、首!!!」

「シノ、だからキャラ!
もー、ファンクラブの皆が見たら即倒ものネ。」

「ファンクラブなんてー、クソ食らえーー!!
あははははははは!!!」


「誰か、あの子何とかして・・・。
クラサメ君もカヅサに殺気向けてないでどうにかしてよ。」

「・・・・・・・・・。」








地下にあるバーのドアを開けると、リボンの着いた鈴がチリンチリン、と音を立てて私たちを出迎える。
他にも同じような考えの候補生上がりや、飛空船の整備士のおっちゃん、さらには武官さんまで来ていた。
今日は客が多いみたいで、ママも少しやつれた顔をしていた。

「あら、いらっしゃいシノちゃん。
今日はいつにも増して元気ねぇー、いつも仏頂面で来るのに。」

「来たよーママ!
あれ〜今日は剃ってないと伺えるあごひげが素敵だnグハッ」

「あらー、その口二度と開けないようにしてほしいのかしら?」

「スミマセン。」

いたい・・・ガチで頬っぺたヒリヒリする。

「「「(ママ恐るべしッ!!)」」」

後ろの3人の思考が合致したと言うのを私は知らない。


「お、シノちゃんじゃねーかい。
今日はどうしたんだ?まーた愚痴零しに来たのかい?」

「あ、テツさん!
今日はねー、ふふ、候補生になったお祝いにママに酒奢られに来たの!」

「お、そりゃめでてーなぁ!楽しめや!」

「おうともよー!!」

「あーん?
そりゃ、この武官が認められねぇなぁ?
おめぇら二十歳なのか?よぉ」

次に絡んできたのは、当初宿舎の件で問い詰めたあの武官さん。
なんだ、こんなしょっぱいところ来てたんだ。と口にしようとしてママの鉄拳を思い出し飲み込む。

「あらぁ、シュウちゃん?久しぶりじゃない。
あんたも候補生のときまったく同じことしてなかったかしらー?
ママの記憶力は侮れないわよー。」

「ゲっ・・・・・・それでも認めん!
どうしても認めてほしかったら、俺に酒で勝つこったな。」


「その約束、二言はありませんね?
もし私が勝ったら酒飲み放題、お金は武官さんもちで。負けたらもう一度訓練生してもいいですよ?」

「お、そんな事言っちゃっていいのか?
いっとくが俺ゃあ、酒は強いぞ?」

「望むところです!」



「お!シノちゃんとシュウが飲み比べだとよ!!
どっちが勝つか懸けようぜ!!俺はシュウに千ギル!」

「じゃぁシュウに1万だ。」

「シュウに5千!」

「おめえら・・・俺はシュウに5万だ。」

「おいおい勝負にならねぇじゃねぇか!」


バーにいた人たちが次々と金をかけていく。
私はニコニコと微笑む。負けるつもりなんてさらさらないからだ。
その中で・・・


「・・・・・・シノに10万ギル。」

「ええ!?クラサメ君が懸けるの!
というか学生がぽんと出せる額じゃ・・・」

「ああ、厳しい。だがあいつを信じるから大丈夫だ。」

「・・・・・・クラサメ・・・。」

「ヒュー。カッコイイねぇ、クラサメ君は。
じゃ、私もシノちゃんに1万!」

「じゃぁ僕はシュウ武官に・・・・・・・
・・・・・・・・・シノに2万で・・・。」



「あーら?じゃぁ私はシノちゃんに2万ギル

「!
ママ・・・愛してる!!!」

「え?ちょシノ、クラサメ君は!?
10万もだしてんのに!ほらもう心なしかこの子涙目だよ!?」



結局、数こそは圧倒的にシュウ武官の方か多いものの、金額は私15万にシュウ武官18万と、僅差だった。

「あー、もういいか?
そんじゃー始めようぜ。せいぜい酔いつぶれないようにな。」

「はい、望むところです。」








――こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。










蝶は酒に飲まれる。