FF零式 | ナノ

「・・・・・・ん・・・。あ、さ・・・」

「良く眠れたか。」

ふわふわした気持ちで目が醒めると、上のほうから心地よい低音が聞こえてきた。
まだ頭は夢見心地で、その安心する声と暖かさが新たに眠気を誘う。

「・・・・・・・・・――ん!?
な、ななななななん・・・むぐッ!!」

「声が大きい、まだ日も昇らない早朝だ。
とりあえず冷静になれ。話しはそれからだ。」



・・・―――

―――・・・・・・。



「―――それで、床で私がおきるまで待っていた・・・と?」

スサヤは黙って頷くとそれ以降沈黙を守った。
・・・ああ、又やってしまった。

私は別に浮遊病などの類ではない。
単刀直入に言うと、”一度寝たら朝まで起きない”のだ。
母曰く、トイレも目をつぶったままいき、何事もなかったかのように寝だすらしい。
だが、何度かクァールと一緒に寝ていたり、母の布団に入り込んだまま目が覚めたことがあった。
それを想定しての、謝罪を寝る前にしたのだが・・・本気で謝罪しなおさなくてはならない。

「・・・本当、ごめんなさい。
こうなった以上、私が責任を取るわ。」

「・・・・・・、責任を取ってどうするんだ?」

一筋の汗がこめかみを流れる。
軽く息を整えて、意を決する。




「責任を取って、スサヤを嫁に貰います。」




「・・・・・・・・・は・・・、」

「・・・・・・・・・。」

一心にスサヤを見つめる。
これが私としてのけじめだ。お父さん、これでいいんだよね。
しかしスサヤの反応は私の想像したものではなく、
静かに呆れているような、そんなものであった。

「一つ聞いていいか、ミスキ。
その落とし前のつけ方は誰に教わった?」

「・・・?父に。
【誰でも間違いを犯したいときくれぇある。
万が一、一緒に寝ちまったときは・・・落とし前つけて娶(めと)れ。】と。
あ、でも大丈夫よ。こんな結婚の仕方だけど、絶対に幸せにするから。」

「・・・・・・・・・はあ。いいかミスキ。
お前の親御さんの意見は確かに正等・・・ともいえるが、
お前はその言葉の解釈を盛大に間違えている。」

「・・・?
そうなの?」

「まず一に、【一緒に寝る】の意味の違い。
そのニに、生物学上俺は男でお前は女。お前は娶られる方だ。
そして最後に・・・・・・俺たちは間違いなど犯してはいない。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・れを・・・、
それを最初に言わないかああああッ!!」

「知らん!俺は事実を言ったまでだ。
提示した事実の中に間違いが起きていないだろう!」

あそこまで決心をつけた自分が恥ずかしくなってきた。
何なのだこの男は!
何なんだ自分はッ勝手に早とちりして・・・!!

気が動転して、もう何が正しいのかが分からなくなった。
とりあえず自分が間違っていたことは分かったが認めたくないッ!

「だって、さっき貴方【一緒に寝た】っていっていたじゃない!」

「だからその意味を組み違えているといっているんだ。」

「【一緒に寝る】なんて、二人で睡眠をとる以外のどういう意味があるっていうのよ!」

「・・・ッ、親父さんの言っていたのは

【男女が性行為をする】という意味だ!」


「・・・!」



男女が、性行為をする・・・

途端、自分の顔が火照るのが分かった。
・・・それってつまり、そういうこと!?

「な、なななっ・・・くぁw背drftgyふじこlp;@:」

「とりあえず落ち着け。」



・・・―――

―――・・・・・・。



「本当に・・・ほんっとうに、
ご迷惑をおかけしました。」

蒼龍に古くから伝わる礼儀作法【正座】をし、両手を前の床にそろえてつける。
そして額を床にくっつけるほどまで下げる・・・【土下座】というもの。
母曰く、深い謝罪や請願をするときはこれを使うらしい。まさか本当にやることになるとは。

「・・・いいから、顔を上げろ。怒ってなどいない。
ところで、その構えはどういう意があるんだ?」

ゆっくりと顔を上げる。
私はまだ半分納得がいかないが、本人がいいといったらいいのであろう。
今日の事は墓場まで持っていくほどの汚点だ。

「これはあれよ、蒼龍に伝わる伝統的な礼法、【土下座】。
深い謝罪や請願なんかに用いるの。そして長時間足を組むと結構しびれるわ。」

「すこし関心があるな。
それにしても何故、ミスキがそのようなものを?」

「それは・・・・・・どうでもいいじゃない、別に。」

一瞬、母親の身元を話そうとするが、万が一の事があるかもしれないので伏せる。言えるわけないわよね、母が蒼龍人で、しかも父が白虎の人間なんて。
そう、この世は戦乱の世なのだ。仲間は無条件で救うが、敵と分かれば切り捨てられる。これまでだってそうだ。仲良くなった人は親の国籍を知った途端離れていく。そして、きっとスサヤも・・・
両親の出身が朱雀でないというだけで、どうしてこんなにも苦しまなくてはいけないのだろうか。

ふと視線を感じ、そんな思考を隅に追いやり頭を振る。
時刻を見れば、5時を半分回ったところだった。
あれから30分たったのか。どおりで日が昇ろうとしているわけだ。

「さ、私は早朝のランニングに出かけることにするわ。
スサヤはこの後、どうするの?朝食まではあと1時間以上あるけど。」

「・・・・・・俺は朝は素振りだ。
お前は就寝前と早朝は毎日それなのか?」

「ん、えぇ。毎日やっていないと女は筋肉付かないからね。
数日抜くと体力も筋力もすぐなくなるもの、女って不便ね・・・男と違って。」

発した後にしまったと思った。
いまのは軽く皮肉に聞こえたかもしれない。

「そうか、それは大変だな。
だが、女だからこそ無理は禁物だぞ。体調管理は気をつけろよ。」

しかし、返ってきた言葉は優しい声音。
表情からも、本当の意味で心配しているのが見て取れた。
いつもなら上から目線のその言葉に眉根を寄せるのだが、なんだかそんな気にはならなかった。

「、・・・ありがとう。」

スサヤの笑顔は、人を安心させる力があるみたいだ。
さすが、伊達に美形と言われているわけではないようだ。
こちらも自然と笑顔になる。




宿舎を出れば、まだ早春の暖かいような冷たい風が温度をさらっていく。
夜の帳は上がり、東からは冬の昼間のような、暖かく優しい光が静かな魔導院を照らそうとしていた。









A butterfly makes a mistake.
(また少し)(貴方を知れた)








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あくまで私の考察ですが、文化的には侍が蒼龍、WW2時代の日本とアメリカが混じったもの白虎、だと思っています。
感想や意見は本当にうれしいし、更新する気が起きます。コメントしてやんよ!な貴方、どうぞよろしくお願いします。oyz