FF零式 | ナノ

※ネタバレになりますので、1周終わらせてから読む事を推奨します。






赤黒い雨がオリエンスの空を覆う。

レムがルシに。

12人の挑戦者が審判に。

今、世界が終わりを告げようとしていた。


彼らがホシヒメと共にいって3時間。
まだ・・・忘れてはいない。
これ以上忘れるものですか。
待つことしか出来ない私は、筆と紙で彼らを記憶にとどめる。

かつて・・・穏やかに笑いあっていた0組の教室に、思いを馳せる。
クラサメがまだいたときも、私は何度かあの子たちと一緒に笑ったことがあった。

墓地で、静かに眼を閉じるとふと、
教室から唄が聞こえた。
エースがよく、歌っていた唄。

帰ってきたのかと思い、足は自然と0組の教室へ。





「うん、そうだね
楽しい未来のこと、いっぱい考えよう!」


「あら、皆帰ってきたのね。お帰りなさい。」

『シノ隊長!』

皆口々に私の名前を呼び、ただいまと言う。
心の隅で、嗚呼彼らはやりきったんだなと悟る。

「ふふ、みんなずいぶん暴れまわったようね。
そこで何をしているの?」

「あのね〜、これからのことを考えてるんだよ〜」

「それは楽しそうね。私も混ぜて欲しいな。」

肯定の返事を貰い、彼らと同じように一歩下がったところに立つ。

「じゃあこれからまず、何しましょうか?」

「マザーを誘って、白虎とか、蒼龍とか行きたい」

「散々ミッションで行ったろ、白虎にも蒼龍にも」

「戦いにじゃなくて、遊びに行くんだってば」

「それ、いいな

これからは僕たちもマザーも、ゆっくり出来そうだしな。」

「では、ちゃんと旅の予定表を作らないとダメですね」

「さすが委員長!きっちりさんだね〜」

「誰が委員長ですか!」

「じゃあさ、白虎と蒼龍に行った後は、何する〜?」

「そうだな

戦い以外の知識を学ぶってのはどうだ?」

「ええ〜、また勉強にテスト〜!?」

「でも今度は、武器や魔法のの使い方ではありませんよ」

「んじゃ、何勉強すんだ?
他に勉強することなんてねぇだろ?」

「遠い昔の偉人の物語とか
どうして花は芽生え育つのか、とか・・・」

「他にもあるわよ?
夜空の星や月、太陽の話とか、建物の作られ方とかね。
戦いの他に、学ぶことは沢山あるわよ。」

「そんなのが勉強なのか?
・・・でも、それは新鮮かもね」

「んじゃんじゃ、その勉強が終わった後は?
もっとずっと先はどうするの?」

「ずっと先って、あんだよ?」

「うーん、たとえば10年後とか?」

「10年後か。想像もつかんな。」

「シノはもう30だなぁ?おい
そういうのなんっつーかしってっか?三十路っつーんだぜコラァ」

「え゛、ちょ、ナイン!君はまったく!
私のことはいいのよ私のことは!!
まったく、こういうことだけは詳しいんだから。」

そこで何処からともなく笑いがこみ上げる。
いつもどおりの、何の変哲もない幸せな会話。

「ふふ、・・・でも、みんな一緒なら、10年たっても楽しそうです。」

「うんうん、絶対にそうだね。
楽しいに決まってるよ」

「はい、わたくしもそう思います。」

「うーん、でも、未来なんてどうなってるかわかんないじゃん?
だから僕は、今が続く方がいいと思うんだよね〜」

「あぁ、それで小さな声で、【大人になんかなりたくないぃ】って言ってたのか?」

「なんだそりゃ!?」


そしてまた、皆で笑いあう。
その笑顔が宝石のように輝いていて。
私は、暖かい陽だまりを見るように眼を細めた。


ふとシンクは皆を見渡して、




「わたし・・・ひとりじゃなくて、よかった。」



静かに、穏やかに・・・まるで日陰でお昼寝しているかのように気持ち良さ気に眠るシンク。
彼女の旅は、ここで終わったんだろう。


「あら・・シンク、寝ちゃったの?」

「ン・・・なんだかあたしも眠くなって来ちゃったな。」

「じゃあ、みんなで昼寝しましょう!」

「お、俺は遠慮しておく。」

「ほーらキング、恥ずかしがんなって!
せっかく全部終わったんだから、いいだろ今日ぐらい。」

「でも、ここでは全員で雑魚寝出来るスペースはありませんね。」

「武器を背にして、座りながら寝るってのはどう?」

「いいな。」

「ではいっそ、皆で手をつないで寝ましょう!」

「え・・・・・・でもま、今日ぐらいはいいか。」

「やった!ほら、皆やるんだよ。」


次々と自分の武器を地面に刺し、それを背に手を繋いで座っていく。
シンクは半分寝る形になってしまったが、皆すごく楽しそうだ。

「ふふ、じゃ、私は医療課から掛け布団でも持ってきましょうか?」

「権力乱用というものですね。」

「大人の事情と言うことにしておいてね。」



戻ってきたときには、12人で静かに眠っていた。
私は一人一人名前を呼びながらその薄い掛け布団を掛けていく。

「みんな、おやすみなさい。」


一人、眼を閉じながら荒々しく駆けて来る音を聞く。

大きな音を立ててドアを開けたのは、マキナとレム。
12人の静かに眠る姿を見るや駆け寄り、必死になって起こそうとする。

「おい、おきろよ、おい!」


「マキナ。」

「・・・シノ、隊長。」


「彼らは眠ったわ、永遠に。
私たちに、新たな光【きぼう】を託して。」


クリスタルの壊れる音がした。

――これから、新たな世界の幕開けとなる。


世界はマキナとレムによって、新たに歩みを進めるだろう。
私はその手助けをしよう。

彼らに知を与えよう。



私の、愛した世界で。
























ひらひらと、蝶が舞う。


時は戦後。

フィニスの刻は幕上げとなり、
世界は再び平和へと足を踏み出す。

―――クリスタル無き世界。
それは、死んだ人間を・・・思い出せる世界。

歴史は彼らを置き去りにしたけれど、

私たちは、覚えている。



「やっと、貴方に会えた。」







A butterfly loves the death.
(歯車は回る)(くるくると)