同窓生 | ナノ

同級生


この白い雪と


年が明けた1月の半ば。今年最初の雪が降る夜は、びっくりするぐらい、静かだった。
初雪の日は、いつだって特定の過去が蘇る。何年経ってもそれは変わらなくて、だからいつしか俺は、雪が苦手になっていた。

雪の白を見ると、あの子を思い出す。

もう、何度繰り返せば、『思い出』に変わるだろう。
こうして白い雪が降り積もる度。白い息を吐き出す度。初恋をしていたあの頃を思い出す。過去の出来事なんだから「思い出」で間違いはないんだろうけど、俺の中でそれはまだ決着がついていなくて、雪を見て、あの子を思い出す度にいつも胸の奥をキュ、と痛ませる。折り合いのつかない想いだけが、心臓に巣食って取れない。

もし、あの時気持ちを伝えてれば、なんか変わったのかな。
時折、思わずにはいられなかった。踏み出すことが怖くて言えなかった「好き」の一言を、言えていたら。そしたら、俺は毎年毎年、こんなにあの子のことを思い出すことはないんじゃないかって。

――タイムマシンがあったら、俺は間違いなくあの日に戻りたいって願うと思う。
あの子がそばにいたら、それでよかった。いなくなった今、余計それに気づくんだ。

は、と息を吐き出すと、白い息は静かに空気に溶ける。
凍えそうな雪の夜。初雪は今夜中降り続けて、明日にはこの街を白く染めるんだろう。それを見て、俺はまたあの子を思い出すんだ。
目を閉じても、未だ鮮明に浮かび上がる、あの子の笑顔。

「おそ松くん」

「っ!すみれちゃ、…――」

呼ばれた気がして慌てて後ろを振り向くけど、そこにあの子はいない。
乾いた笑いが喉を震わせて、再び夜の中を縫って歩いて行く。


やまない雪はこの街に降り積もっていく。

俺から、あの子が消えないまま。