庭球 | ナノ

02



PiPiPiPiPiPiPiPi....

「ん、・・・」

乾いた空気が頬を掠める。
朝の暖かな日差しと、家の前の電線に停まるスズメのさえずり。

朝だ。

今日も私の一日が始まる。


「ふぁ、冷た!
・・・・よし、今日も一日、がんばるぞー!」

裸足で床を滑った足は、芯から冷えたフローリングの冷たさが直に伝わる。
急いで身支度をし、弁当を詰める。今日のおかずはハンバーグだ。
玄関からローファーを持ち、鞄とお弁当があるかを確認してから2階のベランダに手を掛ける。

ベランダに出ると、鞄と靴、弁当を右隣の家のベランダの籠へ、綺麗に放る。そのまま数歩下がり、助走をつけて走りる。
置いておいた段差を駆け上がりながらお隣さんのベランダへ飛翔、着地。

「ふっ!!」

きまった!
よし、今日も黒川ハル、我ながら華麗なジャンプ!

自画自賛し終えると、すばやく鍵のかかっていないベランダから中に入る。
部屋の中はカーテンが閉まっていることもあり、薄暗い。
カーテンを全開まで開けると、ベッドの上の物体がもぞもぞと動く。

「にーおーうーくーん!
朝ですよー、朝練遅れるよー?」

「・・・ぅん、・・・・・・あと、1時間・・・」

「長い長い(笑)」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。あれ、寝ちゃった?」

「・・・・・・・・・。」


はぁ。
今日の朝から早速ため息をついてしまった。
しょうがないなーと思う反面、昔みたいでうれしくなる。




「・・・・ぅぐッ!
・・・・・・・・・黒川。お前さん、もっとスマートな起こし方できんのかのう?」


「へへっ、おはよ!
でも起きたから問題なし☆だよー」

「まったくおまんは・・・・・・・・・・・ハァ。」


今の状態はといえば、私が仁王の腹に思いっきり乗っている状態。
こうなったらいきなりの腹の圧迫で寝心地はよくないだろうし、乗られた衝撃で目が覚める。一石二鳥だ。

「ほーらほら、支度して!
もう6時15分だよ、ご飯食べる時間なくなるよ?」

「わかっちょる、理解したぜよ。」

「そう?じゃ、下降りてるねー」




「あ、黒川。」

「ん?」


「おはようさん。」




「・・・・・・・・うん!」










今日も私の一日が、始まった。