庭球 | ナノ










――君は、【運命】を、信じるか?


私は【運命】なんていう言葉は嫌いだ。
自分が選び取って走った道が、全て運命によって決められていたなんて考えてしまったら・・・。
一体私たちは、何のためにこの世に生れ落ち、死んでいくのだろうか。


けれど・・・

お前らと出会えた事が【運命】なのだとしたら、
【運命】ってのも、悪くないのかもしれない。


・・・こんな風にさ
人の心は矛盾であふれてる。
そんなもんなのさ、人間ってのは。












ん、良くわかんないか。
じゃ、昔の物語を聞かせてやろう。



あるとき、天才と謳われた少女がいた。
彼女はテニスだけが自分の全てで、救いで、友達だった。
負けなしの彼女はやがてテニス界の頂点へと登りつめたが、その齢・・・歳はまだ20にも満たなかった。
やがて、その才能に嫉妬した人たちによってテニスに愛された少女はテニスを失うんだ。
そして彼女は思った。【これが神の与えし運命なのか】。彼女はただただ、神を恨んだ。
どうしてもテニスを諦め切れなかった彼女は、2年。辛く苦しい手術とリハビリを経て、もう一度全国大会へと出場を果した。
そして決勝の日・・・彼女はトラックに轢かれた。朦朧とした意識の中で少女は思うんだ。
【あぁ、運命とはなんて残酷なんだろう。】

こうして、テニス界を震わせた一人の少女は・・・永遠にその世から姿を消した、とさ。
はは、ちと脚色しすぎかな。


ん?なに・・・そうか、確かにかわいそうだな。
でもな、きっとその少女も別の世界でテニスをしているだろうさ。

なに、その少女の名前が聞きたいって?
そうだな・・・お前が15になったら教えてやろう。はは、そう拗ねるなって。



15歳なんてあっという間だよ、6歳。
それに焦る必要もないじゃないか、




(その少女は、眼の前にいるんだから。)











――世界は少女を、

【anomaly】-例外-

と呼んでいた。











--------------------

さて、始めてしまいました新連載。
意見・感想、随時募集しています。