08
仁王がいない世界で、もう1週間が過ぎた。
輝いていた毎日の1週間はとても短く感じられたのに、
ああ・・・どうしてだろう。すごく、永遠のように長かった。
最近は仁王は学校にあまり登校しなくなった。
していたとしても、教室に入らず授業にも出ない。
顔を見れるだけでも、幸せだったのに。
ねぇ、神様。何がいけなかったのかな。
自暴自棄にそんな思考に陥るが、それは結局答える人のいないむなしい自問自答。
悲しいほどに・・・悔しいほどに綺麗に澄んだ秋空の下、風は一人の私の温度をさらってゆく。
手につかめない、水のように通り抜ける風を感じ、何か仁王みたいだなと思った。
「黒川。」
「ん?あ、丸井君。どうしたの?」
誰もいない放課後の教室に一人たそがれていると、背後から丸井君が声をかけてきた。
彼とはあまり話はしないが、女子にも人気でよく話題に上がる。
「・・・お前、仁王の事どう思ってんの?」
「・・・・・・仁王?
なんで又急に・・・」
「・・・いいから、良いから答えてくれぃ。」
その表情は真剣そのもので、有無を言わせない。
とても女子間の恋の話とはかけ離れた聞き方だった。
「・・・好き、だよ。」
「・・・それ、は・・・恋愛感情として?」
「――分からない。
もう、何も分からないの。
気が付けば仁王を目で追ってて、離れたら嫌で、本当は彼女が出来るのも見ていられなかった。
私の世界の中心は仁王で、ずっと私と一緒にいてくれると思ってた。――そんなはず、なにのにね。」
あまり良く知りもしない他人に何はなしかけてるんだろうと思って、にじみ出てきた涙を拭う。
無理やりでも笑顔を作って、謝罪しようと思ったそのとき、丸井君が口を開いた。
「これで、本当に良いのかよ。
俺は赤の他人だし首突っ込むのもどうかと思ったけど・・・お前らが二人でいないとおちつかねぇんだよ。
このまま何もしないで後悔すんだったら・・・ぶつかって後悔した方が良いんじゃねぇの?」
「・・・・・・!」
はた、と気が付いた。
そうだ、私はまだ何もしていない。
仁王と真剣に話してもいないし、私の気持ちも伝えていない。
気持ちで昔の自分に負けてどうする。
雅君を守るのは・・・私なんだ。
「ありがとう、丸井君。
ちょっと行ってくるね!!」
「おぅ。ちなみに黒川。」
「?」
「仁王に対するその感情を世間一般じゃぁ・・・恋って言うんだぜぃ。
あいつは屋上だ。」
「・・・ッ、ありがとう、丸井君かっこいい!」
「だろぃ?」
その言葉を背に走り出した私は、もう止まる気がしなかった。
雅君。
貴方に、いいたいことがあるんだ。
辛くて悲しい時、私を呼んでほしい。すぐに駆けつけるから。
私は何があっても雅君の見方だから。
雅君が、好きだから。