07
『ふ・・・ぐ、うぅ、っ・・・ハルちゃん・・・!』
――これは・・・・昔の夢か。
夢なのに自我ははっきりしている。
これは確か、ハルの家と俺の家でキャンプに行って、真夜中に森に入ったときの事。
迷子になって、虫の声も聞こえない森でひとり、泣いていた時。
『や、やっと見つけた・・・!雅君!!』
『ハルちゃん!、ッ・・・なんでここ、わかったの?』
『へへ、ハルのこと呼んでる気がしたから!』
『ハルちゃんすごい!早くかえろ!!』
『うん!!・・・・・・あれ?』
『どうしたの?』
『ここ・・・どこ?』
『え!?帰り道わからないの!!?』
『雅君に呼ばれてると思って、良くわからないけどここまで走ってきたから・・・・・・ごめん』
『う・・・・わぁあああああん!!』
『な、泣かないで雅君!ハルがついて・・・・・・・・・ぅ、っふぁ・・・』
『グスッ・・・ハルちゃんも、ないて、んじゃん・・・!』
『泣いてないよぉ・・・。』
――このときは、たしか助けに来たハルも一緒に迷子になったんだ。
このときは真夜中で、救助が来たのは確かあと3時間は後・・・夜明けごろだ。
まるで勝負しているかのように、大声で泣き始めた。
『ぐす・・・・・・・・・。』
『ズズ・・・・・・・・・。泣き疲れちゃった?』
『違う、声が出なくなっちゃっただけ。』
『雅君、それ、【泣きつかれた】っていうんだよ』
『違うもん!そういうハルちゃんは!?』
『ハルはさいしょから泣いてないもーん!』
『えーーー!!ずるいぞ』
『なにおー?』
『やるかー!?』
『『・・・・・・・・・・』』
『『ブフッ!!』』
『あはは、でもハルちゃんがいてくれてよかった。』
『あはは!ハルも!!雅君がいたから今も楽しい!!』
『ハルちゃんがいないと、怖くてずっと泣いてた。』
『じゃぁ、これからもハルが雅君と一緒にいて、雅君守ってあげるね!!』
『えーー!それじゃぁかっこ悪いよ!今度は僕が守る!!』
『やだ!ハルが雅君をまもるもん!』
『女の子に守られるなんて恥ずかしいよ!
おとおさんがいってたよ、好きな女の子を一生懸命守りなさいって!!』
『す、好きな女の子!?
じゃぁ、雅君はその子を守ればいいじゃん!!』
『守るよ!ハルちゃんを!!』
『わたし!?え、でも・・・雅君、ハルのこと好きだったの?』
『好きだよ!ずっと一緒にいたいもん!』
『ほ、ほんと?ほんとのほんと?』
『ほんとのほんと!大きくなったらけっこんしようね!』
『ありがとう!でもね・・・ハルはけっこん、できなくてもいいんだよ?』
『え!?僕の事、キライ、なの?・・・ぅ、』
『ち、ちがうよ!大好きだよ!泣かないで?
けっこんって、いろいろたいへんなんだって。
ハルは雅君とずーーーっと一緒にいれればいいんだ!』
『そっかぁ・・・じゃぁ、ずーーーーーーーーっと、一緒にいようね!』
『うん!』
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「っ!」
バサッ
「ハァ、はっ・・・部屋・・・か」
首筋から流れる汗はあながち秋の寒さの所為でもなかろうが、ひんやりしていた。
右手を額につけ、再度後ろへ倒れる。
急に上半身をおき上げたため、軽い眩暈に襲われる。
昔の夢を見た。
内容はうっすらとしか思い出せないが、
閉じ込めたはずのハルとの楽しい思い出。
「クソ、・・・!」
自分から選んだ選択に、今だ未練がましくすがり続けている自分に、苛立ちを覚える。
いっそのこと彼女でも作って忘れようともしたが、結局意味の成さないことであったことは過去に実証済みだ。
いいんだ、自分は一生苦しみ続ければいい。
それでハルとの関係が壊れないなら。
自分の事を【幼馴染】として見ている彼女をこれ以上自分勝手な感情で傷つけないのであらば、それで充分だ。
――兄弟として生まれたかった。
姉貴と、俺、双子のハル。
そうすれば兄弟なら、こんな気持ち、抱かなくて良かったのに。
【幼馴染】と言う枠があれども、結局赤の他人。
いつかハルは、自分以外のほかのヤツと結ばれて・・・・・・・・・
「・・・・・・やめたぜよ。つまらん。しけた。」
自分の感情を「無」にする。
もういいんだ。
もし本当に【運命の赤い糸】があるのだとしたら
俺の小指の糸の先は
きっと、ハルの前で切れている。
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きっと仁王さんは兄弟になっても禁断の愛しそうです(´Д`*)ハァハァ