04
「ハル−、ご飯食べよー。」
「ん、ちょっと先生に呼ばれてるから、先に食べてていいよ。」
「あー、了解。人気者は辛いねー。」
「あはは、いってきます。」
まったく、あの国語の先生は人使いが荒い。
しかもなぜ私なんだ。昼ご飯の時間を割いてまでやるほどの用でもないし。
そう思いながらプリントの束を抱え裏庭側の廊下を歩く。
「・・・・・君、わた・・、―――・・ら」
ふと、普段は人気のない裏庭の方で声が聞こえた。
ここからでは会話は良く聞こえないが、声の主は女生徒であろう。
告白現場だったら失礼なので、通りすがるときに告白相手の顔ぐらい見ていこうと、
視界の端に意識を向けつつ前を向いて歩く。
裏庭を通り抜ける2,3秒。
私にはその男子生徒の髪の毛の色が、白髪に見えた。
この学校に白髪は―――一人しかいない。
思わず足を止めそうになる。
だが、よく考えれば当たり前のことなのだ。
私の幼馴染は、私が言うのもなんだが、カッコイイ。
小さい頃はよく女に間違われていたが、
中学の1年にあがった頃からどんどん身長が伸び始めた。
だから、彼がもてるのも無理はない。不思議ではないのだ。
今までだって雅君の恋愛の噂はたくさん聞いてきたではないか。
いまさらこんな現場に遭遇したって、なんら不思議ではない。
だけど、なんだろう。
無性にムカムカしてきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし。このことは忘れよう。うん。
5時限目、体育。
私は今だ先のことが頭から離れず、授業に身が入らないでいた。
ダメだダメだ、集中しなければ!!
「よぉし、いっくぞー!」
ただいま、バスケの試合中。
味方チームからパスをもらうと、すかさずゴールへと走る。
だが途中で2人に囲まれている状態となり、他にフリーの人もいない状態。
ここからなら・・・!
意を決して、3ポイントの距離からゴールを狙う。
高く飛翔し、投げたそのボールは、
弧を描いてゴールへと吸い込まれるようにして入った。
「よしっ!」
一瞬の静寂。
「うあああっ、ハル、あんたやっぱすごい!
うちの女バス真剣に入らない!?敵ながら感服!」
「ハルナイス☆君がいてくれたら百人力だ。」
「うえ?あ、えっと、ありがとう?」
瞬く間に私の周りに輪が出来る。
なんか、ヒーローになった気分だ。
だが、次の瞬間。
意識が遠のく。
視界の端に驚いた顔の雅君を確認した気がした。
そして、・・・・暗転。
嗚呼、私は倒れたんだ。