halloween2013 | ナノ

今日ハロウィンだったんだね


朝、学校に行く。今日も今日とて何事もない一日の始まりだ。
目覚まし時計を何度も止めて、弟にたたき起こされて(色気がない)、のんびり朝飯食って、ゆっくり駅までチャリを漕ぐ。定期を改札にかざして、いつも乗る各駅停車の、ドア付近のいつもの場所に体を預けながら音楽を聴く。スマホで誰かの呟きでも見ていれば時間も潰れる。電車を降りて、同じ格好をした学生に混じり登校する。いつもの朝だ。

「チっす、斎藤。今日も早いね的な。」

「よぉ、香。……と、ギル。
お前珍しいな、この時間にいるなんて。」

「よ、よぉ葉月。偶然な!」

明日は雨的な?と香が悪態をつくも、ギルの様子はいつもより少しだけそわそわしているように感じる。何故だろう。しかしそんな疑問も、今日の一限はなんだったっけという思考にかき消されてしまうぐらいにはどうでもいいことだった。

教室に入れば朝の早い本田や、何故かいつもこの教室にいる隣のクラスのカークランドに挨拶をし、フランシスが俺の教室に来て、HRギリギリにアントが駆け込んで、教師の連絡事項とギルベルトのどうでもいい話を聞いて朝は更けていく。

「でよー、そこで俺が…」

「あー。」

「……だったんだよ。あ、あとよ!…」

「……ねえさ、ギルちゃんさ。
お前今日どうしたの?なんか挙動不審じゃね?」

「へっ!!?
別にそんなことねぇぞ!?」

「そうなの?発情期じゃないの?」

「俺は猫じゃねーよ。やたら鳴いたりしてねーよ。」

休み時間に、ギルと自販の紙パックジュースを買いに行く間ずっとこいつは話し続けていた。まるで何かに関連した名前があるように、変なところを強調したりして。まあ本人がなんでもないというなら詮索をするのも野暮というものだ(第一面倒くさい)。よってギルちゃんの挙動不審も俺の視界からはすっぱりと外れた。

「ただその…」

「あ?」

「な、なんでもねー…。」

「あっそう。」

屋上にアントーニョとフランシス、ギルベルトと俺。四人でいつものように昼飯を食べて、高三だから午後からは選択授業。専門志望のアントーニョは早々にバイトに行き、フランシスは56時間目が倫理。ギルちゃんは今日も古本屋かゲーセンか。俺は五時間目の授業が終わったら下校。それぞれ自然解散の流れだ。

授業が終わって、今日はそのまま帰って寝るかと思っていたら、下駄箱で先に帰ったと思っていたギルちゃんが待っていた。

「あれ、ギルちゃん。先帰ったんじゃないの?」

「おぉ。と、図書室で昼寝してた。
お前さっき英語だったんだろ?
その、どうだった?」

「ん?どうだったって?いつもどおりつまんなかったけど。」

「そ、そっか…じゃ、じゃあ、帰ろうぜー!!」

「お前いつも変だけど今日は一段と変な奴だな。」

「俺様は超かっこいいだろー?」

「あー、はいはい。」

近所にあるギルちゃんちにお邪魔しようと思ったけど、なぜか今日はダメだというので適当にそこらへんによって、家帰って。今日という俺の学生生活の一日は過ぎて行く。


「ねー兄ちゃん」

「んー?」

「今日ハロウィンだったじゃん?何個か菓子ぶんどって来たんじゃないの?」



「……ハロウィン?」



俺はこの時初めて、今日というなんの変哲もない日がハロウィンというイベントだということに気がついた。そういえば気に留めていなかったけど、クラスの女子がやたらお菓子を回していた気がする。本田が俺にミルクキャンディをくれたのはもしかしてこのことだったんだろうか。

ギルちゃんには、悪いことをしたな。
俺はそう思って、その数秒後には空腹に従ってその思考を葬り去った。










<<一年後>>

久々に4人が揃った。お互いやることも違うし共通点もないけど、大学で知り合った知人と会うよりも気軽に会話のできるこの雰囲気を感じると懐かしくなる。それは全員同じだったのだろう。自然と会話は、誰かの恥ずかしいエピソードだったり、高校時代の先生の話しになった。

「そういえばさー、今日ハロウィンだね。」

「え?うん、まあそうだけど。
珍しいね、葉月が行事ごとを覚えてるなんて。」

「まーね。去年はギルちゃんに悪いことしちゃったからね。」

「えっ……お前、覚えてたの?」

「いや、あの時は本気で忘れてた。
だから…ギルちゃん。

Trick or Treat?」

「……っ!!
な、なんで今更言うんだよ!!どうせ今年も忘れてんだろうなって思ったから、家に…!」

「へぇ。じゃあ、イタズラだね。」

「せやせや。イタズラやな。」

「うーん、響きが妙に胸躍るよね。」

「な、なんだよお前ら、うわ、ちょ、アッー!」



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お題提供の紅火さん、ありがとうございました。
男子は関係が気軽で良いと思います。

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